消費税には非課税や免税などがあり、個人事業主にとっては理解が難しい部分です。
ここでは、消費税の課税や非課税、商品券などの課税について、わかりやすく解説します。
商品券は課税?非課税?
商品券に消費税がかかるのかどうか、こういった話をよく聞きますので、まずはそのことについて説明します。
商品券は消費税法では、「物品切手等」に含まれるとされ、これに該当するものは非課税になります。
「物品切手等」に含まれるものとしては、商品券のほか、ギフト券、旅行券、プリペイドカードなどがあります。
これらのものは金銭と同様で、この後に何かを購入することで、その商品にかかった消費税を払うことになります。
例えば、商品券を使って1000円の文具を購入すれば、1080円を支払うことになり、80円が消費税になります。
商品券自体が購入の目的ではなく、文具を購入するわけですので、商品券に消費税がかかると二重課税になってしまうのです。
【参考】基本通達 郵便切手類等及び物品切手等の譲渡関係(国税庁)
商品券の仕訳の例
例えば、自分の事業用に商品券を購入して、文具を購入した場合の仕訳は以下のようになります。
借方 | 貸方 |
---|---|
他社商品券2000円 | 現金2000円 |
借方 | 貸方 |
---|---|
消耗品費1852円 仮払消費税741円 |
他社商品券2000円 |
このように、利用した時に消費税を計上することになります。
また、商品券を贈答する場合には、接待費などに仕訳します。
借方 | 貸方 |
---|---|
接待交際費2000円 | 現金2000円 |
この場合は消費税に関する勘定科目は出てきません。
消費税が課税されるもの
消費税の非課税などを説明する前に、消費税が課税されるものについて整理しておきます。
国税庁のHPによると、以下のような記載があります。
消費税の課税対象は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等及び外国貨物の引取りです。
消費税の課税対象(国税庁タックスアンサー)
もう少しわかりやすくすると、以下の場合に消費税が課税されます。
消費税が課税される要件
- 日本国内の取引である
- 事業者が行う取引である
- モノやサービスなどを提供して対価を受け取る
この他に、輸入されたものを引き取る場合は、引き取った事業者などに消費税が課税されます。
上の要件に該当すると消費税が課税されるわけですが、基本的に日本国内で事業者が行う取引は、ほとんどが課税になります。
消費税が課税される要件について、もう少し具体的に見ていきたいと思います。
1. 日本国内の取引であること
消費税は日本国内の法律で決まっていることですので、当然、国内取引のみが課税の対象になります。
少し前まではアマゾンのキンドルストアで購入したものなどには、消費税がかかりませんでした。
消費税の課税は国内の取引ということですが、事業者の所在地が日本国内サービスを受ける側の所在地が日本国内であることが要件となり、消費税は課税されています。
2. 事業者が行う取引であること
消費税は事業者が行う取引にかかります。
個人でメルカリやヤフオクでものを販売したり、家を買い換えるために、個人がこれまでに住んでいた家を販売する際には消費税は課税されません。
ですので、中古物件などを個人から買う場合には、消費税を支払う必要はないのです。
3. モノやサービスなどを提供して対価を受け取ること
消費税は具体的なモノやサービスなどを提供して、その対価として金銭を受け取る際に発生します。
つまり、寄付などによりお金を渡したり、受け取ったりしても、そこには消費税は課税されないのです。
とはいっても、寄付することによって何か商品がもらえる場合などは、本来は課税されることになります。
消費税がかからないもの
では、逆に消費税が課税されないものは、どういったものになるのでしょうか。
消費税がかからないものには、3つの種類があります。
消費税がかからない取引
- 不課税取引
- 非課税取引
- 免税取引
それぞれ簡単に説明していきます。
1. 不課税取引
不課税取引は、消費税が課税される要件を満たしていない取引になります。
つまり、日本国内の取引、事業者が行う取引、モノやサービスを提供して対価を得ている、という要件のどれかに該当していないことになります。
不課税取引には以下のような取引があります。
不課税取引の例
- 個人が自分のものを販売する場合(自分の車・家、不要なものをメルカリなどで販売するなど)
- 寄付金・補助金・見舞金・贈与
- 配当
- 保険金・共済金
- 損害賠償金
- 給与・報酬
自分のものを個人で販売する場合や、寄付金などの対価としての支払いではないものなどが非課税に該当します。
不課税取引は初めから消費税の対象ではないので、課税売上割合の計算など、消費税の算定に影響を及ぼしません。
2. 非課税取引
非課税取引とは、消費税の課税条件には当てはまるものの、税金をかけることに馴染まなかったり、政策的な配慮などから、非課税とするべきものになります。
非課税取引の例は以下のようになります。
非課税取引の例
- 土地の売買や貸付
- 株や国債・債権の取引
- 預貯金の利子
- 切手(郵便局の販売)・印紙
- 商品券・プリペイドカード
- 国や地方団体、公益法人などに対する手数料
- 保険による医療の料金(美容整形などは課税)
- 住宅の家賃
非課税取引は「消費税の課税要件に当てはまる」という前提ですので、不課税取引と異なり、消費税の課税売上割合の算定に使用します。
また、非課税取引のための経費として支払った消費税については、基本的に控除することができません。したがって、その分の還付を受けることができないのです。
3. 免税取引
免税取引とは、消費税の要件に該当するものの、輸出などによって国外で販売することによって、免税となる取引をいいます。
免税取引の例には以下のものがあります。(もっと多くのものが該当しますが、一部について掲載します。)
免税取引の例
- 日本国内からの輸出
- 日本と海外との通信、郵便
- 国際線の航空券
- 免税店で外国人に販売するものなど
免税取引も、非課税取引と同様、消費税の課税要件に該当するものですが、輸出などによって消費税が免税されるもので、最終的に販売する場所などが理由で免税となるものです。
免税の適用を受けるためには輸出取引であることの証明(税関長が証明した書類など)が必要になります。
また、免税取引のための経費として支払った消費税は還付の対象となります。
不課税・非課税・免税の違い
不課税取引、非課税取引、免税取引の違いは簡単にいうと以下のようになります。
不課税・非課税・免税の違い
- 不課税取引 消費税の課税と無関係な取引
- 非課税取引 消費税の課税要件に該当するが、事情により非課税となる取引
- 免税取引 消費税の課税要件に該当するが、輸出などにより免税となる取引
また、3つの違いをわかりやすく説明するために、課税売上割合の計算式で確認してみます。
- 課税売上割合=課税売上高(課税+免税)/総売上高(課税+免税+非課税)
消費税は、受け取った消費税から支払った消費税を控除して計算しますが、支払った消費税を全額控除できるわけではありません。
課税売上割合が95%以上で課税売上が5億円未満の場合に限って、支払った消費税を全額控除することができるのです。
つまり、上の計算式だと、非課税取引は分母にあって分子にはありませんので、非課税取引が多いと課税売上割合が小さくなってしまうのです。
仮に売上が非課税取引のみの場合は、課税売上高は「0」になってしまいますので、仕入や経費などに支払った消費税はいっさい還付されないことになってしまいます。
一方で、免税取引の場合は、課税売上高として計算されますので、仕入や経費にかかる消費税は還付されることになります。
まとめ
消費税の非課税・不課税・免税など、少しややこしい部分について説明してきました。
特に商品券の場合は、商品券の購入時と利用時で消費税の計上が異なりますので、間違えないように意識したいところです。贈答する場合も同様に注意しましょう。
また、これから輸出取引を始めるという場合に免税になることも理解しておくことが必要です。輸出商品の仕入については、消費税が還付されることも重要だと思います。