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株主優待はとても魅力的ですが銘柄によっては株価が乱高下するので心配…
そんな場合は株主優待だけ取得することができます。
今回はクロス取引によって株主優待を取得する方法や注意点を解説します。

クロス取引で株主優待を取得する手順

株主優待を取得するためのクロス取引は、以下のように行います。

  1. 権利付最終日前に現物株の買いと、信用取引の売り建てを同時に行う。
  2. そのまま権利付最終日の翌日まで保有する。
  3. 権利付最終日が過ぎたら速やかに現渡しで決済を行う。

理解すればとても簡単な手順なのですが、証券口座を開設していない人や、株の取引についてまだ勉強中の人には用語も難しいと思います。

一つ一つ丁寧に説明したいと思います。

株主優待はどうやったらもらえるのか

まず、株主優待を取得する方法について確認したいと思います。

一般的に決算月の月末(権利確定日)にその企業の株式を保有していることで、優待を受けることができます。

少しややこしいのですが、権利確定日に株式を保有しているということは、權利付最終日までに株式を保有しておかなければなりません。

權利付最終日とは、権利確定日の3営業日前のことをいいます。

つまり、3月31日が権利確定日だとすると…

  • 3月26日(金)→3営業日前(権利付最終日)
  • 3月27日(土)
  • 3月28日(日)
  • 3月29日(月)
  • 3月30日(火)
  • 3月31日(水)

この場合、3月26日に株式を保有していないと3月31日の権利を取得できません。

多くの企業は3月決算ですが、他の月が決算月の企業も多くあります。

また、年に2回優待を行なっている企業もあります。3月決算の企業が2回の優待を行う場合、9月と3月が権利確定月になるのが一般的です。

自分の気になる銘柄や優待があるなら、事前に権利確定月を確認しておきましょう。

クロス取引で株主優待を取得するってどういうこと?

クロス取引で株主優待を取得するには、株式の現物買いと信用売りを同時に取引します。

この取引によって、現物の株式を保有し、信用取引で売り建てを行います。

この状態になると、株価がいくら動いてもプラスとマイナスが相殺されて、損得が出ない状態になります。(ただし手数料などがかかります。)

権利付最終日が過ぎたら、「現渡し」という方法で、決済を行います。

こうすることで信用の売り建てのために借りた株式を現物の株式で返済することになり、決済後には優待の権利だけを取得することになります。

クロス取引の前に信用口座を開設しましょう

クロス取引を行うには、まず証券口座を開設する必要があります。

口座を開設していない人はネット証券の口座に開設するのが手っ取り早いと思います。

SBI証券や楽天証券は取引手数料も安くおすすめです。(私は両方に口座を開設しています。)

証券口座を開設したら、次に信用口座を開設します。信用口座とは信用取引を行うためのものです。

信用取引とは

信用取引とは、現物の株式で取引を行うのではなく、買い建ての場合は証券会社から資金を借りて株式を買うことになります。

買った株式は証券会社が保管し、買い付けた本人の保有にはなりません。したがって、株主優待を受けることはできません。

信用取引で売り建てる場合は、証券会社から株を借りて市場で売却します。それを後に買い付けて証券会社へ返却します。

どちらも現物の株式を保有することなく、売買の差額で利益を得ることを目的とした取引です。

証拠金が必要となりますが、その3.3倍までの資金で株の売買が可能となります。

また、現物の株は同一銘柄の場合、買い、売り、買いの3回まで売買できますが、信用取引だと売買回数に制限がありません。

信用取引では自己資金以上にレバレッジをかけて取引ができるので、稼げる金額が大きくなるのと同時に損失も膨らむ可能性があります。

ここでは株主優待に関する信用取引のみを説明しますが、株価の変動による利益を得るために信用取引を行う際には十分に注意してください。

信用取引の売り建てにはルールがある

信用取引の売り建てについてはルールがありますので、それについて説明します。

信用売りは自分が保有していない株(証券会社から借りた株)を市場で売るので「空売り」とも呼ばれます。

株式を借りるので、この時にいくつかの費用が生じます。

  1. 手数料
  2. 利息
  3. 逆日歩(一定の条件で生じる費用)
  4. 配当落調整額

1. 手数料

手数料は証券会社によって異なりますが、約定代金によって決まっているのが一般的です。

これは現物の株式を購入した際にもかかります。

楽天証券やSBI証券の場合は手数料が安いのですが、それでも2000円の株式を100株分クロス取引をする場合、200円から300円程度の手数料となります。

2. 利息

株を借りることになるので、利息の支払いが生じます。

信用取引には種類があり、その種類ごとに利息が異なります。

  • 制度信用…取引所が選定したもので最長6ヶ月保有できる
  • 一般信用…保有期間は証券会社が決める

SBI証券と楽天証券の利息は以下のようになっています。

SBI証券 楽天証券
制度信用 1.15% 1.10%
一般信用(短期) 3.90% 3.90%
一般信用(無期限) 2.00% 2.00%

利息は年利ですので、それぞれ1日あたりは365で割った率になります。

大した金額ではありませんが、それでも数日保有する場合は株価によっては数百円かかりこともあります。

3. 逆日歩(ぎゃくひぶ)

逆日歩とは制度信用において、貸し株が不足した場合に、株を調達するためにかかる費用です。

具体的には、空売りをしたい人が多くいる場合、貸し株用の株式が不足してしまいます。そうすると、機関投資家など大口の株主から株式を借りてくることになるのですが、このときに発生する費用が逆日歩です。

逆日歩は現物株式を持っている人の入札で決まりますので、貸し株が不足すると高くなる傾向にあり、場合によっては高額になってしまうことがあります。

一般信用で信用売りができればいいのですが、一般信用は証券会社が用意する株式ですので、用意した分がなくなってしまえばそこで終了です。

このときにどうしても信用売りをしたい場合は、制度信用を使うことになりますが、逆日歩が生じることがあります。

クロス取引をする場合は、制度信用ではなく一般信用で行うようにした方がいいでしょう。

事前に一般信用の売りがある銘柄を早めに取得しておくことが大切です。

4. 配当落調整額

配当を支払う企業は、株主優待の権利と同日に配当の権利も確定します。

つまり、権利付最終日に現物株式を保有していることで、株主優待を取得するのと当時に配当の権利も取得できるのです。

ただし、クロス取引においては現物株により配当をもらえる一方で、信用売りを保有していることで配当落調整金を支払うことになります。

株価は理論上、権利付最終日を界に配当分の金額が下落することになります。

なぜなら、権利付最終日の翌日に保有していても配当を受け取ることができないため、株価が下落するのです。

これは信用取引をしている人にとっても同じです。

権利付最終日の翌日には配当の分、株価が下落してしまうのですから、信用取引で株の買建てをしている人は配当ももらえず損してしまいます。

そこで、信用売りをしている人は配当金の分を信用買いをしている人に支払うことになるのです。

これが配当落調整額というものです。

権利付最終日に信用売りで日を跨いだ場合、信用買いで日を跨いだ人に対して、配当落調整額を支払うことになります。

配当が1000円であれば、配当落調整額を1000円支払うことになります。

現物で配当をもらって、信用売りで同額を支払うので、配当による損得は生じないことになるのですが、一時的に差が生じます。

配当金が1000円の場合、以下のようになります。

  • 配当金でもらう額…800円
  • 配当落調整額で支払う額…1000円

つまり、200円分損しているのです。

これは配当金は税金分を徴収された後の金額が支払われるのですが、一方で配当落調整額は満額支払うことになるからです。(源泉徴収は20.315%ですが、ここでは20%として計算しています。)

ただし、この差額分は損金扱いとなりますので、損益通算されて税金分は最終的に戻ってきます。

配当の受け取りを特定口座で株式比例配分方式を選択している場合は自動で損益通算され、翌年1月に該当口座に戻ります。そうでない場合は確定申告することで還付されることになります。

配当に関する申告については、金額によっては専業主婦の方の場合などは夫の健康保険から外れてしまったり、国民健康保険料の算定に使われたりと様々なところに影響がありますので、事前にお住いの市町村の住民税担当課や国民健康保険担当課へ相談した方がいいでしょう。

こちらの記事も参考にしてください。

実際のクロス取引のやり方について

株主優待がほしい銘柄を決めたら、その銘柄について自分の契約している証券会社の該当銘柄を確認して、株主優待の権利付最終日を確認します。

確認したら権利付最終日の寄付きまでに、現物買いと信用売りを同時注文を行います。

注文は寄付きで成行注文をします。ザラ場中に同時注文をすると同一の価格で約定しない可能性がありますので、気をつけてください。

両方の注文が同一価格で約定すれば、株価が上下しても株価による損益は発生しません。

そして、権利付最終日の翌日に「現渡し」を発注します。

これで、信用売りで借りた株式を現物の株式で返済することになり、保有している株式はなくなり、クロス取引は終了です。

クロス取引にかかる費用は全部でいくら?

例えば、楽天証券で以下の株式についてクロス取引をすることのシミュレーションをしてみます。

  • 株価  :1株1,500円
  • 取引株数:500株
  • 株主優待:クオカード5000円分
  • 配当  :1株10円

楽天証券の一般的な超割コースの手数料を基本として、権利付最終日の3日前に一般信用の短期でクロス取引をすることとします。

項目 費用
手数料 903円
信用売りの利息 240円
逆日歩 一般信用のため0円
配当落調整金 損益通算できるため0円
合計 1,143円

この場合、1,143円の費用で5,000円分のクオカードを取得できたことになります。

まとめ

株主優待をクロス取引で取得するという手法は、かなり一般的な手法のため、一般信用の貸株がなくなってしまうことがあります。

一般信用の場合は逆日歩が生じることはありませんが、貸株にかかる利息が少し高くなっていますので、事前に利息分の計算をして、いつ頃までにクロス取引をするかを確認しておきましょう。

参考サイト

【参考】つなぎ売りで株主優待を獲得する(楽天証券)

『つなぎ売り』をマスターして、株主優待を「お得に」活用しよう!(SBI証券)