大事なのは住宅に対する自分の価値観を知ること
50代は、マイホームの老朽化に加え、子どもが独立して家を出ていくタイミングが重なり、リフォームもしくは建て替えを検討し始める節目の年代と言えます。
とは言え、リフォームと一口に言っても、内容は様々です。
- 屋根
- 外壁
- 水回りなどの修理
- 部屋数の減少
- バリアフリー化
- 耐震性・断熱性の向上など
リフォームで20~30年先まで安心して住めるようにしたいと考える場合、建て替えと同じくらいの費用になることもあります。
それなら思い切って建て替えた方がよい、と思ってしまいますが、実はこれも一概には言えません。
なぜなら、住み慣れた住宅には愛着や思い出があるからです。
壊してしまったものはもう二度と元には戻らないため、リフォームか建て替えかを検討する時は、それぞれのメリット、デメリットを知り、自分にとって何が一番幸せなのかをよく考える必要があります。
建物の寿命に関する考え方の変化
国土交通省が平成18年に発表した住生活基本法の概要によると、減失住宅(取り壊しなどで住宅が滅失するもの)の平均築後年数が、イギリスは77年、アメリカは55年なのに対し、日本は30年と極端に短いことがわかっています。
しかし、これは日本の住宅が諸外国に比べて耐久性が低い、壊れやすいというわけではありません。
日本には新築に対して強い憧れや願望を抱く人が多いため、マイホーム=新築という図式が成り立ちやすくなっています。
そのため、以前までは家族構成が変わり、老朽化が目立つようになると、真っ先に建て替えが検討されていました。
一方欧米では、古い建物にこそ価値があるという考えが浸透しているので、築70~80年の住宅も建て替えではなくリフォームをして住み続けます。
それが最近は、日本でも建物を丸ごと壊してしまう建て替えではなく、基礎や骨組みは残して内装や間取りなどを変えるフルリフォームを選択する人が増えています。
このような変化は、耐久性を高める施工技術の向上に伴い、「家は長く住むもの」と意識が変化してきたからだと言われています。
リフォームについて
リフォーム(reform)には改良、改善するなどの意味がありますが、「住まいをリフォームする」のように使用される場合は、壊れた部分や古くなった箇所を元に戻す、原状回復するという意味合いが強くなります。
つまり、老朽化してしまった住宅を以前と同じ程度にまで直す、というのがリフォームということになります。
これに対し、近年よく聞く言葉にリノベーション(renovation)があります。
リノベーションには革新や改装と言った意味があることから、リフォームに比べて機能や価値の向上を高める意味合いが強くなります。
リノベーションでは最新の耐震設備の導入や、時代に合った間取りへの変更を行うため、水道管や排水管の移動など、工事がかなり大規模になることが多いでしょう。
このようなことから、リフォームとリノベーションは区別されたものという見方がある一方で、現時点では明確な線引きがされていないことから、リノベーションもリフォームの一部として認識されていることが多く、大がかりなリフォ
ーム(フルリフォーム)をリノベーションとしている業者もあります。
そのため、リフォームに関しては「どこまで変えるのか」によって、かかる費用などがまるで違ってきます。
費用
一般的な相場は次のようになります。
- トイレや洗面所 20~30万円
- 浴室やキッチン 100~150万円
- 屋根 50~120万円
- 外壁や外構・エクステリア 50~150万円
- 間取りと内装一新 700~1,000万円
- 耐震補強 50~200万円
改修費以外の費用
リフォームでは、リフォームそのものに掛かる費用の他にも、今ある設備の解体や撤去の必要がある場合は、解体・撤去費が必要になります。
また、壁などを壊してみて初めて、外から見るだけではわからなかった内部の劣化や欠陥・不備などが明らかになることもあります。
そのような時は追加での工事費用が必要となりますし、基礎と骨組みだけを残してほぼ全面的に改修するフルリフォームであれば、工事期間は住むことができないので別に家賃が発生します。
さらに、工事の騒音や車両の運搬で近所に迷惑をかけてしまう場合は、挨拶に行って手土産を渡すこともあり、その費用も必要になります。
メリット
- 予算に応じて改修したい部分を決めることができる。
- 一部分のリフォームであれば引っ越しをする必要なく、工事期間も短く済む。
- 愛着のある家を残すことができる。
- 建て替えに比べて税金(不動産取得税、固定資産税など)が少なく済む。※
- 耐震補強やバリアフリーに伴うリフォームでは、自治体によっては補助金が出る場合がある。
※ただし、フルリフォームをする場合はリフォーム後の家を再評価する場合があり、この場合は固定資産税が以前より高くなることがあります。
デメリット
- 建て替えに比べて間取りなどの自由度が低い。
- 希望をすべて叶えようとしたり、耐震や断熱などの大規模工事では、建て替えと変わらない費用が必要となることがある。
- 保証期間が施工会社によってまちまちで、期間を過ぎると不備があっても対応してもらえないことがある。
- 経過年数によって、再びリフォームが必要となる場合がある。
計画性のないリフォームは注意
気になる部分をその都度直していく場合、大々的な工事が必要となっていざ建て替えに踏み切ろうとしても、「2年前にお風呂をリフォームしたばかりだから」「屋根を直して日が浅い」などの理由で、費用的にも精神的にもリフォームしたことが負担となってしまうことがあります。
そのため、リフォームをする場合は数年後ではなく、10年20年後を見据えてよく検討するようにしましょう。
建て替えについて
建て替えは、すでに建築されている住宅を壊し、同じ場所に新たに住宅を建てることを言います。
基礎も取り壊し、更地になった状態に住宅を建てるので、まったくの新築になります。
当初はリフォームを希望していた場合でも、改修する部分が多い、耐震設備などを入れる大がかりな工事を行うとなると費用が建て替えと変わらなくなることもあるため、思い切って建て替えへと変更する人もいます。
費用
建て替えに伴う費用には、主に次のものがあげられます。
解体費
新しく住宅を建てるお金と同時に、今までの住宅を取り壊す解体費が掛かります。
解体費は坪数×3~6万円と記載されている場合もありますが、それはあくまでも住宅の取り壊しのみの費用であることが多く、実際にはこの他に更地にするための庭木の撤去や外構、カーポートなどの解体、事務手数料などが掛かります。
さらに、住宅密集地などの場合は周囲に飛び散らないよう養生をする必要があったり、工事車両が入れないと近くに駐車場を借りるなど、思いもよらぬことにお金がかかるケースがあります。
そのため、概算で話を進めるのではなく、しっかりと見積もりをとる(できれば数社から)ことが大切になります。
引っ越し、仮住まい代
解体から新築が建つまで、一般的にはおよそ半年ほど掛かります。
その間は、アパートなどを借りて住む必要があり、引っ越し代(現在の家を出る分と、新しい家に入る分)と家賃が別途必要になります。
税金
建て替えの場合には新築と同様に、不動産取得税や登録免許税、固定資産税などが掛かります。
ただし、これらの税金は減税制度によって控除が受けられるので、必ず申請しましょう。
家具や家電の購入
建て替え後は間取りなどが大きく変わるため、これまで使っていた家具が合わなくなります。
また、このタイミングで家電を一新しようと思う人も多いですよね。
その場合は、家具や家電の購入費を用意しておく必要があります。
メリット
- 耐震や断熱などの設備が最新のものを取り入れられる。
- 希望に沿った間取りで家を建てることができる。
- リフォームに比べてローンを組みやすい。
デメリット
- リフォームに比べて費用がかかる。
- 高額のローンが家計を圧迫し、老後の生活に不安を感じることがある。
- 工事期間が長い
- 愛着のある家を壊すことになる。
再建築不可物件に注意
再建築不可物件とは、建築基準法上の道路に間口が2m以上接していないものを言います。
簡単に言うと、昔に建てられた物件では今の基準を満たしていないため、取り壊さずに住み続けるのはOKでも、壊して新たに建て直すのはNGとなっている家を指します。
そのため、建て替えを検討する場合は、自宅が再建築不可物件であるかどうかを必ず確認する必要があるでしょう。
住み替えも選択肢に入れておきましょう
自宅の老朽化対応を考える時、リフォームと建て替えの二択ではなく、そこに住み替えという3つ目の方法を含めることで、さらに自分に合った選択が可能となります。
住み替えとは、今住んでいる家から違う家に替えること。
現在の家は処分して、違う場所に新たに中古物件や新築物件を購入する、賃貸住宅に住むなど、希望に沿って選ぶことができます。
リフォームや建て替えでは以前と同じ(一軒家なら一軒家、マンションならマンション)の住宅形態となりますが、住み替えなら一軒家からマンション、もしくはマンションから一軒家へ変わることが可能ですし、高齢になって病気や事故などが心配なら、自宅を売ったお金を元に高齢者住宅に入居することもできます。
まとめ
家の建て替え、リフォーム、住み替えについては、退職などの時期と重なることが多くなります。
退職金である程度の費用は賄えると思いますが、退職後の生活なども踏まえて金額を決める必要があります。
大きな出費となりますので、よく検討することが大切です。