エンディングノートって知っていますか?元気なうちに自分の死やその後のことを綴っておくノートです。
今回は知っているけれどまだ書いたことがないという人に向けて、必要性や書き方を具体的に解説しますね。
エンディングノートとは
「終活」が世間一般に浸透すると同時に、「エンディングノート」の存在も広く知られるようになりました。
エンディングノートは簡潔に言うと、自分の最期をどのように迎えたいか、死を想像することで見えてくる、残された人生の生き方を綴るものになります。
経済産業省が平成24年に行った調査によると、エンディングノートの認知度は30~40代でも60%近く、50代以降は60%を超えています。
しかし、エンディングノートを知っている人は多くても、実際に作成したことがある人は少ないのがげ現状です。経済産業省の報告書によると60代で2.4%、70代で5%となっています。(『安心と信頼のある「ライフエンディング・ステージ」の早出に向けて』より)
また、書店などに並んでいるエンディングノートを手に取ってみたものの、ページ数がかなり多い上に事細かく書くことに躊躇ってしまって、結局手が出しにくいと感じるケースもあるようです。
このように、エンディングノートに興味があるにも関わらず、なかなか始められずにいる人のために、今回はエンディングノートの必要性や内容、書き方などをご紹介したいと思います。
エンディングノートを作成する意味
長い人生を終えるその瞬間まで、はっきりと自分の意思を家族に伝えることができるのなら、もしかしたらエンディングノートは必要がないかも知れません。
しかし、現実では病気などである日突然意識を失い、一言も言葉を発せられないままに最期を迎えることもあります。
そんな自分の姿を想像したら、淋しいし悔しいと思いませんか?
エンディングノートを作成する意味は、自分がそのような状況になった場合でも、エンディングノートにメッセージや意思を綴っておくことで、家族や友人に思いを伝えたり、希望する生き方が叶えられると言うことです。
具体的には、治療の選択や葬儀の内容などを書き記しておくことで、万が一意思疎通が難しくなっても本人が望む形の医療を受け、最期を迎えることができます。
また、エンディングノートの存在は本人のみならず、家族にとっても本人の意思を汲んだ治療や葬儀を選択しやすくなるため、精神的な負担を軽減することができるものになります。
エンディングノートを作成するメリット
エンディングや死と言う言葉からは、何となくマイナスのイメージを受けてしまいがちですが、自分がどのような死に方をしたいのかを考えることは、同時に、これからどのように生きていくのかを見つめ直すことに繋がります。
また、エンディングノートでは人生の終焉だけに目を向けるのではなく、これまで歩んで来た道を振り返ります。
卒業や就職、結婚、子育てなど、様々な出来事を思い出すことによって、見過ごしてきた幸せに気付くことができ、新たな決意を持ってこの先の人生を進んでいく人も少なくありません。
エンディングノートは何でもよい
エンディングノートは、必ずしも市販されている物を使う必要はありません。
一般的なノートやメモ帳を利用してもいいですし、パソコンを持っている人ならワードやエクセルを使ってオリジナルのエンディングノートを作成してもよいでしょう。
また、市町村のホームページ内には、エンディングノートがダウンロードできるところもあります。
市町村のエンディングノートの例
その他にも、葬儀社が無料配布しているものや、最近はスマホのアプリにエンディングノートが登場しています。
市販のものだとこちらが定番のエンディングノートでかなりの人が利用しているようです。
ペンをとって机に向かって書くのが面倒という人は、気軽に利用できるスマホのアプリから始めてみるのがよいかも知れませんね。
エンディングノートはとにかく、「書いてみる」ことがとても大切です。
まずは、自分の合っていそうなやり方で始めてみるのがよいでしょう。
エンディングノートに書く内容
エンディングノートには特に決まった形式はないため、基本的には自由に書いて構いません。
項目を設けて書き出してみるのもよいですし、日記のように日々思うことを書き連ねていってもよいでしょう。
しかし、それでは何を書いたらよいか悩んでしまうという人のために、ここではエンディングノートに書く内容の例をご紹介したいと思います。
エンディングノートの書く主な内容
- 自分のこと
- 親戚や友人のこと
- 医療や介護のこと
- 葬儀やお墓のこと
- 財産のこと
- 遺品のこと
このようなことを記載しておくことで、自分を振り返るとともに、自分の死後に家族の負担がとても少なくなります。
以下に、一つずつ具体的に説明していきますね。
(1)自分のこと
名前や生年月日の基本情報を始めとして、本籍地、マイナンバー、学歴や職歴、趣味などを記載します。
名前や生年月日は家族が事前に知っている情報と言えますが、中には常用している名前の漢字が略字であったり、本人が記憶している誕生日と戸籍の生年月日が違う(戦後の混乱期まで、このような事例は多くあったそうです)こともあります。
公的な書類に使用するのは戸籍上の名前や生年月日になるため、エンディングノートを作成するのを機会に、一度きちんと調べてみるのがよいでしょう。
また、本籍地やマイナンバーも家族は知らないことが多いですよね。
こちらも公的な書類の記入に必要となることが多いので、エンディングノートに記載しておくと家族は助かると思います。
学歴や職歴は、葬儀の際の紹介に利用することができます。
思い出や記憶を書いておくのがお勧め
自分がこれまで歩んできた人生を振り返ることによって、これからの生き方のヒントに繋がる場合があります。
また、本人が亡くなった後、エンディングノートを家族が読むことで、自分がどのような人生を歩んできたのか、その時何を思ったのかなどを伝えることができます。
このような内容が書いてあると、家族にとってエンディングノートが大切な宝物となるかも知れません。
デジタル情報について
最近は高齢者もSNSを利用することが一般的になってきました。
Twitterやブログなどを開設している場合は、IDやパスワードを控えておくのはもちろんですが、自分が亡くなった後の取り扱いをどのようにするのか、事前に決めておきましょう。
家族に退会を代行してもらうなら、退会手続きに必要な情報を記載しておくとよいでしょう。
ペットについて
犬や猫などのペットを飼っている場合、自分が世話をできなくなった時のことを考えて、世話を引き継いでくれる人を探したり、かかりつけの病院や好物、性格などを書いておくのがよいでしょう。
(2)親戚や友人のこと
遠方に住んでいる親戚などは、本人以外は知らないことも多いですよね。
また、友人や会社の同僚などの名前や住所、連絡先が記してあると、葬儀の時に家族が連絡しやすくなります。
感謝の気持ちを残しておくのもよい
面と向かっては恥ずかしくて言えないことも、文章に残しておけば相手に伝えることができます。
家族はもちろん、友人やお世話になった人への気持ちを綴っておきましょう。
(3)医療や介護のこと
自分に医療や介護が必要となった時、意識不明や認知症などが原因で意思を伝えられない可能性もあります。
そのような場合に、延命治療の有無や、入居を希望する介護施設の連絡先などを記しておくと、本人に代わって家族がその意思を継いでくれます。
アレルギーや服用している薬の情報も書いておくとよい
持病のある人は、そのことについても記載しておくと、薬による副作用などの心配を減らすことができます。
(4)葬儀やお墓のこと
希望する葬儀の形式や、喪主を務めてもらいたい人、呼んでほしい友人や知人を書いておきましょう。
現在の日本では、多くの人が病院で死を迎えますが、葬儀社が決まっていない場合には病院と提携している葬儀社を紹介されることが多いです。
身内を失って悲しみに暮れる暇もなく、家族は葬儀のことを打合せしなければいけなくなるため、葬儀の内容や金額などが曖昧のままに話が進んでしまうことも少なくありません。
その際、本人があらかじめ葬儀社を決めておいて契約をしておけば、家族の負担を減らすことができますよね。
また、遺影に使用して欲しい写真を準備しておくことも、家族はとても助かります。
同様に、お墓をすでに購入済の場合は、お墓の場所や供養の方法について書いておきましょう。
(5)財産のこと
不動産や預貯金、生命保険、資産価値のある宝石や貴金属、骨とう品など、財産の詳細について書いておきましょう。
また、クレジットカードを所有している場合は、その番号を控えておくのがよいでしょう。
ただし、銀行口座やクレジットカードの暗証番号はエンディングノートに書くことをお勧めしません。
なぜなら、万が一にエンディングノートが盗まれた場合に、悪用される恐れがあるからです。
暗証番号は別に記録に残しておくようにしましょう。
借金も書くこと
借金を背負っていることが家族に知られるのは恥ずかしいと言う思いから、内緒にしてしまう人が多いですが、借金の相続放棄は本人の死後3ヵ月以内となっているため、知らないままその期間を過ごしてしまうと、後から残された家族が大変な負担を強いられることになります。
3ヵ月が過ぎたら相続の放棄ができなくなるわけではありませんが、手続きなどが難しくなるため、借金がある時はきちんと伝えることで、残された遺族がいきなり負債を抱えてしまい途方に暮れることを防ぐことができます。
(6)遺品のこと
資産価値はないものの、捨てて欲しくない物や他人に譲って欲しくない物があれば書いておきましょう。
遺品整理の際に、家族が「捨てるべきかとっておくべきか」悩まずに済みます。
エンディングノートの取り扱いについて
エンディングノートは、遺言書とは違い気軽に書くことができます。
ただし、その気軽さゆえに、情報の取り扱いについては少々注意も必要です。
特に財産に関することは、場合によってはトラブルに発展してしまう可能性もゼロではありません。
家族と話し合いながら記入する
後々財産などで揉めないためには、希望をエンディングノートに書くだけではなく、自分の気持ちをあらかじめ家族に口頭で伝えておくことも必要です。
その上でエンディングノートに書いておけば、家族間でトラブルが起こることを防ぐことができます。
また、その時は家族の意向も汲み取るようにしましょう。
エンディングノートは何度も見直して修正しましょう
エンディングノートは、一度書いたら終わり、ではありません。
刻一刻と変化する状況や気持ちに合わせて、何度書き換えて構いません。
また、市販のエンディングノートを利用する時は、すべての項目に記入する必要はなく、自分や家族にとって必要と思う項目だけを埋めるだけでよいでしょう。
ただし、何冊もエンディングノートがあって、異なった内容が記載されていると家族が読んで戸惑う可能性もあるので、最初は思いのままに書き始めて構いませんが、少しずつ一冊にまとめるようにするとよいでしょう。
財産分与はできない
エンディングノートは、例え本人が書いたことが明確であっても、それ自体に法的効力がありません。
そのため、財産分与についてエンディングノートに記しても、その通りに遺産が分配されることはありません。
希望通りに財産を分与するには、遺言書を作成する必要があります。
なお、遺言書の内容をエンディングノートに記載する必要はありませんが、遺言書を預かってくれている弁護士や公証人がいる場合は、家族にわかるよう、名前と連絡先を書いておくのがよいでしょう。
自分で遺言書を持っているなら、エンディングノートに保管している場所を記載しておきましょう。
エンディングノートの作成は家族を思いやる気持ちから
親に終活をしてもらいたい子どもは6割に及ぶと言われています。
終活に対するイメージが変わってきた近年ですが、それでも子どもの立場からすると、自分達の方から終活の話を持ち掛けるのは、「早く死ねと言っているのかと思われはしないか」「財産目当てなのかと疑われはしないか」と不安になるものです。
しかし、今回ご紹介した通り、エンディングノートがあることで残された家族は救われることが多いのです。
決して早く死んでほしいわけでも財産目当てでもなく、むしろ本人が充実した余生を送るために必要だと思っていることがご理解頂けたのではないでしょうか。
もし、お子さんから「エンディングノートを書いてみない?」と言われたら、その時は頭ごなしに否定するのではなく、お子さんと一緒にノートを開いてみてはいかがでしょうか。
セミナーに参加してみる
エンディングノートに関するセミナーは、各自治体などが主体となって開催されています。
本やメディアなどで見ても、いまいちよくわからないと言う場合はセミナーに参加してみると、詳しい説明が聞けたり、疑問に思っていることを質問することができます。
実際に、セミナーに参加した人の多くは、それまで先延ばしにしていたエンディングノートの作成に早速取り掛かることが多いようです。
まとめ
必要だとわかっていても、実際に書くのはどうしても面倒になってしまいます。
まずは、お住まいの市町村のHPなどでエンディングノートを探してみてはいかがでしょうか。
そして、1日1項目でも良いので記入してみてください。書いてみると意外にも楽しく続けられると思います。