今回は終活で重要な死亡後のことについてです。事前に決めておくことで死亡後の家族はとてもスムーズにことを進めることができます。
終活ノートに記入する際には、ぜひ参考にしてください。
葬儀のことは事前に決めておこう
これまで、葬儀と言えば遺族はもちろん親族や会社関係者、友人、町内会などから多くの人が参加し、大規模であるほど故人の弔いになるとされてきました。
しかし今の時代は、身内だけで故人を見送る家族葬や、形式に捉われずに故人らしさを重視した自由葬など葬儀の多様化が進んでおり、葬儀の定義が崩れつつあります。
また、これまでの一般的な葬儀を行うにしても、誰が喪主をするのか、参列者の選別、予算など多くのことを決めなくてはいけません。
「自分が死んだら、葬儀は家族の思うようにして欲しい」と思うかも知れませんが、家族の立場からすればどうすれば故人が喜んでくれるのか思い悩んでしまうこともあるでしょう。
何より、大切な人を亡くした直後に多くのことを決めなければいけない状況は、想像するだけでもその大変さがわかります。
そのため、自分が死んだ後の葬儀について生前にきちんと家族と話し合い、伝えておくのがよいでしょう。
葬儀の段取り、事前に決めておくこと
自分の希望に沿った葬儀を行ってもらうためには、葬儀までの段取りを知っておく必要があります。
時系列で流れを把握することで、自分が見送られる側ではなく見送る側、つまりは遺族の気持ちになって葬儀の準備を考えることができるようになります。
死亡から三回忌までの段取りは以下のようになります。
死亡から3回忌までの流れ
- 搬送先を決める
- 葬儀の打ち合わせ
- 納棺
- 通夜
- 葬儀
- 告別式、火葬
- 還骨法要、初七日法要
- 四十九日法要
- 1周忌
- 3回忌
それでは、一つずつポイントと事前に終活において、事前に決めておくべきことをご紹介していきたいと思います。
1. 搬送先を決める
病院や施設で亡くなった場合、自宅まで運ぶ必要が出てきます。
法律上は遺族が自家用車で運んでも問題はないのですが、看取ってすぐのため、精神的に安定しているとは言えないことから車の運転は控えた方がよいでしょう。
通常、病院や施設から自宅までの搬送には、葬儀社の寝台車が利用されます。
この時、故人が生前に契約をしていた葬儀社があればよいですが、特に決まっていなければ遺族が葬儀社を決める必要が出てきます。
非常に混乱した気持ちの中で、葬儀社を決めることは安易ではないため、前もって葬儀社を決めておくことは遺族への負担を減らすことに繋がります。(なお、多くの病因では提携している葬儀社を紹介してもらうことも可能です。)
その際、必ずしも葬儀を依頼する必要はありません。
見積もりをとって数社の中から選びたいなど希望があれば、搬送のみをお願いすることもできます。
2. 葬儀の打ち合わせ
葬儀の打ち合わせは、喪主が中心となって葬儀社と行います。
喪主は故人の配偶者や子どもが務める場合が多いですが、必ずしも身内である必要はないため、喪主をして欲しい人がいれば終活にて希望を伝えることが可能です。
また、喪主だけが葬儀の全てを決めるのはとても大変なことなので、その場合には世話役を立てて喪主をサポートすることができます。
世話役の仕事は葬儀の進行や会計などが主となるため、親族に限らず信頼のおける人にあらかじめ世話役を頼んでおくと、喪主や遺族にかかる負担を減らすことができるでしょう。
葬儀の参列者を決めておく
葬儀は参列する人数によって葬儀場の規模が変わってくるので、葬儀に来てもらいたい人をある程度ピックアップしておけば、万が一、家族が葬儀社を決める必要が出てきても絞り込みがしやすくなります。
また、ごく限られた身内のみの参列を希望すれば、家族葬を行う判断もしやすくなります。
葬儀を行わないという意思表示もあり
最近は直葬と言って、葬儀を行わずに火葬のみを行う形式を選ぶ人も増えてきています。
しかし、一般的に認知されていないことから、遺族がいくら「それが本人の希望」だと伝えても親族に納得してもらえないこともあるでしょう。
直葬を希望する場合は、エンディングノートや遺書などにきちんと記しておくのがよいでしょう。
3. 納棺
このタイミングで故人が好きだったものなどを一緒に棺に入れることができます。
希望があれば、事前に家族に伝えておくか、エンディングノートに記しておくことで棺に入れてもらうことができます。
ただし、棺に入れてはいけないものもあります。
火葬の際、燃えずに残ってしまうことから、生前に身に着けていた眼鏡や腕時計、指輪、アクセサリーなどはNGとされています。
また、かわいがっていた孫の写真を入れて欲しいと言う希望については、生きている人の写真を棺に入れて燃やすのは縁起がよくないと言われていることから難しいようです。
4. 通夜
通夜が始まる3時間前くらいまでに、遺影に使用する写真を用意する必要があります。
遺族が故人の映っているものから選ぶことも可能ですが、事前に本人が「この写真を遺影に使って欲しい」と希望を伝えていれば選ぶ手間がなくなります。
通夜振る舞いについても希望を残しておくといいでしょう。
通夜振る舞いとは、通夜が終わった後に故人を偲びながら行う会食のことを言います。
原則として、遺族や近親者、生前故人と特に親しかった人に限定して参加をお願いしますが、地域によっては学校や会社関係者、近所の方にも参加案内をすることがあるようです。
可能であればこの点についても事前にエンディングノートに記しておくと、遺族は参加案内を誰にするか決めやすくなります。
5. 葬儀
日本では葬儀の9割を仏教式(仏教葬)が占めると言われていますが、宗派によっては御経や祭壇の飾りなどが異なるため、代々信仰している宗教がある、檀家である場合などには希望する宗派を記しておくことが必要になります。
また、仏教式の場合、戒名がないと葬儀を執り行うことができないと言われています。
戒名にはランクがあり、5万円程度から100万円を超えるケースもあるため、菩提寺がある場合には事前に相談してみるのがよいでしょう。
さらに、通夜や告別式などでの読教を僧侶にお願いした場合にはお布施も必要となります。
お布施には戒名代も含まれていることが多いのですが、全国平均は47万円となっています。
仏教式の葬儀を望まない場合
仏教式以外にはキリスト教式や神道式などがありますが、僧侶などの宗教者を呼ばない無宗教式の葬儀も最近は増えています。
無宗教葬では参列者で自由に故人を見送ることができます。
故人が音楽が好きだったら楽器の生演奏を行ったり、ガーデニングが好きだったら自宅の庭に祭壇を設けるなどして行うことができます。
ただし、仏教式などと比べて式の流れに決まりがないので、その分家族は段取りなどを考える必要が出てくるでしょう。
そのため、無宗教葬を希望する時はできるだけ細かい希望を伝えておく記しておくことが大切になります。
生前契約が可能
葬儀の参列者や内容が決まれば、それに応じておおよその予算も決まるため、最近は生きているうちに自分の葬儀の予約をする人が増えています。
縁起が悪いと言う人もいますが、ここまで読んで頂いたように、亡くなってから葬儀を決めるまでの時間はとても短いため、全く何も手付かずの状態は遺族にとって大きな負担となる場合があります。
仮に故人が葬儀を契約済であれば、遺族は寝台車の手配や葬儀の参列者の振り分けなどを行う必要なく、その時間を故人との別れの時間に費やすことができます。
6. 告別式、火葬
僧侶による読経の後、出棺になります。
火葬場へ移動して骨上げを行い、白木の箱に遺骨を納めて自宅へ持ち帰ります。
なお、葬儀代には葬儀費用(式場の使用料や祭壇、棺の準備、火葬代など)と、接待費用(通夜や葬儀の飲料や食事、お礼品など)、僧侶へのお布施(読教代や戒名代、食事、交通費など)が含まれていますが、見積もりの際に漏れがないか必ず確認するようにしましょう。
葬儀社の中には火葬代を含んでいないところもあるようなので、せっかく生前契約で支払いを本人が済ませていたとしても、火葬代が漏れていることがあると後から遺族がその分を支払うことになってしまいます。
7. 還骨法要、初七日法要
火葬後、自宅もしくは斎場にて僧侶による還骨法要が行われます。
また近年は、遠方から訪れる親戚などの都合を踏まえ、同時に初七日法要を行うケースが増えています。
なお、初七日法要の費用は葬儀代には含まれません。
8. 四十九日法要
亡くなった日を1日目とするため、実際には亡くなってから48日目に行われるのが四十九日法要です。
四十九日法要では納骨が行われるため、事前にお墓がある場合にはそちらに納骨を行いますが、葬儀後にお墓を建てるとなると、四十九日法要には間に合いません。
そこで最近注目されているのが、生前墓(寿陵)です。
自分が生きているうちにお墓を建てておくことで、死後に遺族が墓地を探したり、墓を建てる費用を捻出する負担を減らすことができます。
ただし、墓地を確保した時点で維持費が必要となるため、その点については家族とよく話し合っておく必要があるでしょう。
仏壇について
最近は住まいの変化などから仏壇を購入しないケースも増えています。
もし自宅に仏壇がない場合に、新しく購入を希望するのか、その時は遺産から費用を持ち出しするのか、または実家に仏壇があればそちらに納骨して欲しいなど、希望をエンディングノートに記しておくのがよいでしょう。
9. 一周忌法要
一周忌法要は、亡くなってから丸1年が過ぎた日に行うものです。
四十九日法要に納骨が出来なかった場合、一周忌法要で行います。
一般的に一周忌法要は親族以外にも、故人の友人や知人を招いて行われますが、葬儀と同様に一周忌法要についても希望があれば遺族のみで行うことができます。
10. 三回忌法要
三回忌法要は、故人が亡くなってから満2年が経過して行う法要です。
三回忌の施主は葬儀の喪主が務めるのが一般的ですが、もし喪主が亡くなっている場合には親族や故人に近しい人が行うこともできます。
親族の葬儀などを記録、メモしておく
終活にあたり、葬儀やお墓、仏壇をどうするかについては、本やインターネットで調べた知識だけでなく、親族や知人などの葬儀に出席した時に自分のことと考えて観察すると、色々なことが見えてきて事前に準備しておくべきことがよりわかりやすくなります。
お墓の継承や墓じまいについて
先祖から受け継いだお墓にせよ、自分で新たに購入したお墓にせよ、名義人が死亡した場合にはそのお墓は祭祀財産となり、祭祀継承者を決める必要があります。
祭祀継承者には配偶者や子ども(長男や長女)がなるのが一般的ですが、実はこれに関して法律で決まっているわけではありません。
そのため、遺言の内容によっては上記以外の人、例えば友人などが引き継ぐことも可能ですが、そのような場合は家族の同意が必要となります。
本人の一存のみで決めてしまうと後から遺族と祭祀継承者が揉めてしまう恐れがあるため、必ず配偶者や子ども、親族とよく話し合った上で結論を出すようにして下さい。
また、配偶者や子どもにお墓を継ぐ場合には、維持費の問題も出てきます。
墓地の運営母体は大きく分けて、民間、公営、寺院の3つがありますが、年間の維持費は5,000~15,000円ほどが相場となっています。
墓じまいにかかる費用
祭祀継承者を決めず、自分の代でお墓をたたんでしまうことを墓じまいと言います。
先祖代々が眠るお墓の場合、配偶者や子どもの了承を得ることはもちろん、お墓を継いでいない兄弟などにも話を通し、理解してもらうことが大切になります。
墓じまいをするには、お墓を解体する費用、お墓から故人の魂を抜いてもらう開眼供養をする費用、檀家の場合は離檀費用が必要になります。
それぞれの費用の平均は、解体が1㎡あたり10~15万円(お墓の大きさによって異なります)、開眼供養が1~10万円、離檀が10~20万円ほどと言われています。
税金関係
墓地や墓石、仏壇、仏具など、神を祀る道具など日常礼拝をしているものは相続税が掛かりません。
また、サラリーマンの場合は弔慰金が企業や国から支払われますが、被相続人の死亡が業務上での死亡ではない場合は給与の6ヵ月分に相当する額、死亡が業務上の死亡である場合は給与の3年分に相当する額が非課税の対象になります。
葬儀費用は相続税の控除対象
葬儀の費用(寝台車の利用も含まれます)、通夜や告別式での飲食代、葬儀を手伝ってくれた人への心づけ、お布施や戒名代、読経代、火葬や納骨にかかった費用がその対象となります。
基本的には領収書をとっておき、申告の際に提出をしますが、心づけやお布施、戒名代、読経代は領収書がないので支払った金額や日付、支払先を必ずメモしておきましょう。
生前墓は相続税がかからない
遺族が遺産の中からお墓を建てる場合、その費用については相続税の対象となりますが、生前墓であれば相続税が免除されます。
まとめ
終活で死亡後のことを決めておくことの重要性やポイントなどを説明してきました。
葬儀の段取りなどは喪主でもやらない限りイメージがしずらいと思います。
身内の葬儀なでがあれば、故人をしのぶとともに段取りなどを見ておくのもよいかもしれません。