確定拠出年金は脱退可能!しかし……

60歳まで原則受け取れない」という縛りがある確定拠出年金。

「もしかしたら急にまとまったお金が必要になるかも」と考えると、加入を迷う人も多いでしょう。

なかにはすでに「なんとかできないか?」と頭を抱えている人もいるかもしれません。

確定拠出年金を60歳まで受け取れないというのはあくまで原則です。

例外として認められれば途中での払い出しも可能です。

しかし、もともとは老後資金の積み立てを条件に、様々な優遇措置を設けている制度なので、それを自分の都合で取り崩すとなると、条件が必要になります。

以下では確定拠出年金を脱退し、拠出金を受け取るための条件を解説するとともに、もし再度加入したいと考えた場合の手続きについても紹介します。

確定拠出年金を脱退するための条件は厳しい

確定拠出年金を受け取るためには、以下の4種類の給付形態のいずれかに当てはまる必要があります。

給付形態 概要
老齢給付金 60歳以降に給付が認められる。
障害給付金 重度の障害と認められると受け取ることができる。
死亡一時金 死亡すると給付が認められる。
脱退一時金 一定の条件を満たすと給付が認められる。

60歳になったとき以外に受け取るためには、老齢給付金以外の3種類として確定拠出年金を受け取る必要があります。

以下でそれぞれについて詳しく見ていきましょう。

障害給付金を受け取るための条件と手続き

障害給付金を受け取るための条件

障害給付金を受け取るためには加入者が「重度の障害」に該当する怪我や病気をする必要があります。

ではこの「重度の障害」とはどの程度の障害なのでしょうか。

それは政令で定められる以下のような障害を指します。

障害認定 障害の状態
・障害基礎年金(1級・2級)の受給者
・身体障害者手帳(1級〜3級)の所有者
両手や両足、目や耳に大きな障害があるなど。
療育手帳(重度A)の所有者 日常生活で常時介護を要する知的障害があるなど。
精神保健福祉手帳(1級・2級)の所有者 深刻な精神障害が頻繁に起こり、日常生活や金銭管理などが自分だけでできないなど

障害給付金が受け取れるのは、このレベルの障害があると認められた「障害認定日」から70歳の誕生日の2日前までの期間となります。

この「障害認定日」にも法律で決まりがあり、怪我や病気で初めて医師または歯科医師に診療を受けた日から1年6ヶ月を経過した日、もしくはその期間内の怪我や病気が治った日とされています。

要するに障害給付金は、医師に「一定以上の障害がある」と認められた場合に受け取ることができるのです。

障害給付金を受け取るための手続き

障害給付金を受け取るまでの手続きは4つのステップで構成されています。

障害給付金を受け取るまで

  1. 障害給付金の受取方法を決める。
  2. 裁定請求書の作成
  3. 運用管理機関からの通知を受理
  4. 給付の開始

第一のステップは受取方法の決定です。

受取方法には3種類あります。

  1. 障害年金として分割して受け取る。
  2. 障害一時金としてまとめて受け取る。
  3. 一部を障害一時金、残りを障害年金として分割して受け取る。

この3つの選択肢から一つを選びます。

第二のステップは「裁定請求書」という書類の作成です。住所氏名や口座情報などの必要事項を記入し、運営管理機関に提出します。

第三のステップ運営管理機関からの給付の可否が通知されます。これによって、審査の結果、障害給付金が受け取れるかどうかが決まります。

第四のステップでようやく給付が開始となります。

給付のために運用商品の売却が行われて、契約で決まっているスケジュール通りに指定した口座へ給付金が振り込まれます。

死亡一時金を受け取るための条件と手続き

加入者が死亡した場合、遺族は死亡一時金を受け取ることができます。

受取人はあらかじめ指定していた配偶者・子・父母・孫・祖父母または兄弟姉妹のいずれかです。

指定されていなかった場合は、次の順番で受取人が決定されます。

受取人の順番

  1. 配偶者(内縁関係も含む)
  2. 子・父母・祖父母および兄弟姉妹で、かつ加入者死亡当時、自分の収入で生計を立てていた者。
  3. 2以外の者で、加入者の死亡当時、自分の収入で生計を立てていた者。
  4. 子・父母・祖父母および兄弟姉妹で、かつ2に該当しない者。

手続きは基本的に障害給付金と同じで、障害給付金を受け取るための4つのステップのうち、第二〜第四のステップで請求することになります。

請求は遺族が行います。

脱退一時金を受け取るための条件と手続き

脱退一時金を受け取るための条件

最後の脱退一時金を受け取るための条件は、これまでの障害給付金と死亡一時金に比べて複雑です。

その条件は以下の表の通りです。なお要件1〜3はいずれも全ての条件を満たす必要があります。

要件1(企業型で資産が少額の場合)

  • 年金資産が「1万5,000円以下」
  • 確定拠出年金の加入者、もしくは運用指図者*ではない
  • 加入者の資格を喪失した翌月から6ヶ月経っていない

※運用指図者:拠出を行わず、運用だけをしている人のことです。

要件2(2016年12月までに資格を喪失し、個人型確定拠出年金の加入資格がない場合)

  • 60歳未満である
  • 確定拠出年金に拠出した合計期間が「1ヶ月以上3年以下」、または年金資産が「50万円以下」
  • 個人型確定拠出年金の加入者の資格がない(国民年金の免除を受けているなど)
  • 企業型確定拠出年金の加入者でない
  • 要件1に当てはまる場合の脱退一時金を受け取っていない
  • 障害給付金を受給する権利を持っていない
  • 加入者の資格を喪失してから2年以内である

要件3(2016年12月までに資格を喪失し、個人型確定拠出年金の加入資格がある場合)

  • 個人型確定拠出年金の加入者の資格がある
  • 継続個人型年金運用指図者*である
  • 障害給付金を受給する権利を持っていない
  • 確定拠出年金に拠出した合計期間が「1ヶ月以上3年以下」、または年金資産が「25万円以下」
  • 継続個人型年金運用指図者になてから2年経っていない
  • 要件1に当てはまる場合の脱退一時金を受け取っていない

※継続個人型年金運用指図者:企業型確定拠出年金の資格を失ったあと、企業型・個人型いずれの加入者になることなく、個人型の運用指図者になった人。かつその申し出をした日から2年経っている人。

要件4(2017年1月以降に資格を喪失した場合)

  • 国民年金保険料免除者である
  • 確定拠出年金に拠出した合計期間が「3年以下」、または年金資産が「25万円以下」
  • 障害給付金を受給する権利を持っていない
  • 加入者の資格を喪失してから2年以内である

また、表中にある「加入者の資格」は以下の通りです。

企業型確定拠出年金 個人型確定拠出年金
企業型確定拠出年金の制度を導入している企業の従業員である 1. 自営業者
(農業年金被保険者、国民年金保険料免除者は除く)
2. 厚生年金保険の被保険者
(企業年金の規約で加入が認められている者に限る)
3. 専業主婦(主夫)など

要件1〜4いずれの場合もかなり限定された条件となっています。

もしこれらに該当しない場合で現状の拠出が難しい場合は、拠出額を少額に抑えて継続するか、拠出をせずに運用だけをしていくことになります。

脱退一時金を受け取るための手続き

脱退一時金を受け取るための手続きは、基本的に障害給付金を受け取る際の第二〜第四のステップと同じです。

しかし脱退一時金の場合、請求先によって裁定請求書の入手先と提出先が異なるので注意が必要です。

請求先 書類の入手先 書類の提出先
企業型記録関連運営管理機関 記録関連運営管理機関*の窓口 記録関連運営管理機関の窓口
個人型記録関連運営管理機関
国民年金基金連合会 個人型確定拠出年金の受付金融機関 個人型確定拠出年金の受付金融機関

※記録関連運営管理機関:確定拠出年金に関わる個人情報や、給付の可否などを判断する機関。JIS&Tや日本レコード・キーピング・ネットワーク株式会社など。

「企業型記録関連運営管理機関」は確定拠出年金の企業型から脱退一時金を請求する場合、「個人型記録関連運営管理機関」と「国民年金基金連合会」は確定拠出年金の個人型から請求する場合の請求先です。

具体的な請求先については、利用している運営管理機関(銀行や証券会社など)に問い合わせましょう。

「やっぱり再加入したい」も可能!

確定拠出年金は、脱退一時金の条件を満たして受給できたあとでも、再加入が可能です。

その場合の条件は最初に加入するときとまったく同じです。

企業型の場合は勤め先の担当に問い合わせる、個人型の場合は取り扱い金融機関の窓口から手続きを進めます。

まとめ

確定拠出年金からの脱退は手続きが煩雑なことが理解できたと思います。

安易に脱退することのないよう、計画的に資産を築いていきましょう。

【参考】脱退一時金の請求 iDeCoポータルサイト