ふるさと納税は返礼品が過熱したため、一定の規制が作られ法改正されました。
今回は、改正内容とともに、改正時期やふるさと納税はいつすればいいのかについて、FPがポイントを解説します。
ふるさと納税の制度が改正されました!
ふるさと納税の返礼品がヒートアップして、高額のものや地域と無関係のものが返礼品になったことから、制度が広まる一方で、制度の趣旨に反するとして、これまで総務省は自治体に対して注意喚起をしてきました。
これまでの総務省の注意喚起は、法的な拘束力はなく、一定の自粛を求めるものでしたが、今回はついに法改正です。
2019年6月に法律が施行されましたので、以前のような豪華な返礼品は減少しました。
改正内容とは?
今回の改正は、ふるさと納税(寄附金税額控除)を規定している地方税法の改正です。
大きく変更されたのは、市町村がふるさと納税を受けるためには、事前に総務大臣の指定が必要になったことです。
これまでは、すべての地方自治体が、ふるさと納税を受け入れることができましたが、今後は総務大臣の指定が必要ということです。
実はこれって、私たちにとっても重要なことなんです。
「指定を受けなければ、ふるさと納税の対象でなくなる。」
具体的にいうと、「寄付金税額控除の特例控除の対象でなくなる」ということです。
どういうことかというと、
ふるさと納税は、住民税の寄付金税額控除として控除されるのですが、計算上、「特例控除」というものがあり、この控除がすごく大きな金額になるため、ふるさと納税した金額のほとんどが還付や控除となります。
この「特例控除」がなくなるということは、仮にある市町村にパソコンの返礼品があるからといって、ふるさと納税をしても、その市町村が総務大臣の指定を受けていなければ、その寄付金については特例控除が受けられないので、寄付金のほとんどの金額が善意の寄付になってしまうのです。
仮に、指定されなかった市町村が「寄付をしてくれた人には、返礼品としてパソコンを送付します」と広報しても問題はないわけですが、ふるさと納税の仕組みが使えないので、寄付をしてもその分は税金から控除されません。
総務省のHPには以下の記述があります。
この改正は、6月1日以後に支出された寄附金について適用となりますので、指定対象外の団体に対して同日以後に支出された寄附金については、特例控除の対象外となりますのでご注意ください。
(ふるさと納税ポータルサイト:総務省)
「間違えて寄付すると控除されないですよ」と総務省も言っているのです。
総務大臣の指定を受けた市町村をとは?
指定を受けた市町村や都道府県は総務省が告示することになっています。
2019年の指定をみると、指定期間が3種類になっています。
- 指定期間:1年4ヶ月(2020年9月30日まで)
- 指定期間:4ヶ月(2019年9月30日まで)
- 指定なし
指定されていない市町村、指定期間が短い市町村については、一応、頭に入れておいた方がいいかもしれません。
指定なしの市町村
当初の予想どおり、4つの市町村がふるさと納税の指定を受けられませんでした。
- 大阪府泉佐野市
- 静岡県小山町
- 和歌山県高野町
- 佐賀県みやき町
市町村 | H30.11月-H31.3月の受入 | 左のうち趣旨に反する受入 |
---|---|---|
大阪府泉佐野市 | 332億円 | 332億円 |
静岡県小山町 | 195億円 | 193億円 |
和歌山県高野町 | 186億円 | 185億円 |
佐賀県みやき町 | 99億円 | 89億円 |
ふるさと納税指定制度における令和元年6月1日以降の指定等について(総務省自治税務局)を当サイトで一部改変
総務省の資料によると、この4つの市町村はふるさと納税の受入額のほとんどが趣旨に反する受入額ということがわかります。
指定期間が4ヶ月の市町村
こちらは、趣旨に反するふるさと納税を2億円以上受け入れていた団体ということで、短い指定期間になりました。以下の表の市町村が該当の団体です。(都道府県は該当なし)
都道府県 | 市区町村 |
---|---|
北海道 | 森町、八雲町 |
宮城県 | 多賀城市、大崎市 |
秋田県 | 横手市 |
山形県 | 酒田市、庄内町 |
福島県 | 中島村 |
茨城県 | 稲敷市、つくばみらい市 |
新潟県 | 三条市 |
長野県 | 小谷村 |
岐阜県 | 美濃加茂市、可児市、富加町、七宗町 |
静岡県 | 焼津市 |
大阪府 | 岸和田市、貝塚市、和泉市、熊取町、岬町 |
和歌山県 | 湯浅町、北山村 |
岡山県 | 総社市 |
高知県 | 奈半利町 |
福岡県 | 直方市、飯塚市、行橋市、中間市、志免町、赤村、福智町、上毛町 |
佐賀県 | 唐津市、武雄市、小城市、吉野ヶ里町、上峰町、有田町 |
宮崎県 | 都農町 |
鹿児島県 | 鹿児島市、南さつま市 |
ふるさと納税指定制度における令和元年6月1日以降の指定等について(総務省自治税務局)を当サイトで一部改変
これらの市町村も4ヶ月目以降については、今後の状況を踏まえて、再度申請をすることで、改めて先の期間の指定を受けることができます。
指定期間が1年4ヶ月
このほかの都道府県や市町村は1年4ヶ月の指定期間となりました。
都道府県と市町村の数は1800近くありますので、ほとんどの団体はふるさと納税を適正に実施していて、1年4ヶ月の指定を受けたことになります。
指定される条件とは?
では、どういった条件で指定されるのでしょうか。
今回の改正では、地方税法などの法令のほか、具体的な基準を記載した告示が制定されています。
これは法令から委任されたもので、法令と同様の効力を持っています。(当記事の中で「総務省告示第百七十九号」は、単に「告示」と記載します。)
市町村が総務大臣の指定を受けるためには、以下の条件をクリアする必要があります。
指定を受けるための条件
- ふるさと納税の募集を適正に実施すること
- 返礼品は返礼割合を3割以下にすること
- 返礼品は地場産品とすること
市町村は総務省に対して申請をして、この条件を受け入れる必要があります。
この内容は、ふるさと納税をする私たちにとっても、返礼品などが変更される元となる内容ですので、注意しておきたいところです。
一つずつ簡単に説明していきます。
1. ふるさと納税の募集を適正に実施すること
これまでは、ふるさと納税について多くの広告を目にしたと思います。テレビCMをはじめ、特にネット上では多くの場所に広告が出ていました。
募集を適正に行うとは、こういった広告についても規制が入ることになります。
このことについては、告示の第2条に規定があります。
総務省告示第179号
第2条第1号
地方団体による第一号寄附金(法第三十七条の二第一項第一号及び第三百十四条の七第一項第一号に掲げる寄附金をいう。以下同じ。)の募集として次に掲げる取組を行わないこと。
イ 特定の者に対して謝金その他の経済的利益の供与を行うことを約して、当該特定の者に第一号寄附金を支出する者(以下「寄附者」という。)を紹介させる方法その他の不当な方法による募集
ロ 法第三十七条の二第二項及び第三百十四条の七第二項に規定する返礼品等(以下「返礼品等
」という。)を強調した寄附者を誘引するための宣伝広告
ハ 寄附者による適切な寄附先の選択を阻害するような表現を用いた情報提供
ニ 当該地方団体の区域内に住所を有する者に対する返礼品等の提供
総務省告示第179号(総務省)
この内容によると、今後は返礼品を強調したパンフレットはもとより、広告自体もかなり制限されると考えられます。
告示とは別に総務省はQ&Aを作成しているのですが、そこには、「お得、コスパ最強、ドカ盛り、圧倒的なボリューム、おまけ付き、セール、買う、購入、還元」といった表現もNGとされていていますので、寄付する側が積極的に情報を取りに行って、ふるさと納税を行うことになると思われます。
ただし、ふるさとチョイス、ふるなび、さとふるといったポータルサイトが存在すること自体は問題ないようです。(サイトのあり方・内容は問われる可能性があります。)
2. 返礼品は返礼割合を3割以下にすること
過度な返礼品は控えるようにと、総務省は自治体に対して、再三注意を呼びかけてきましたが、その点が規制されます。
すでに3割以上の返礼品を提供している自治体はごく一部になりますが、今後は完全になくなると考えていいでしょう。
このことについては、地方税法に規定されています。
地方税法
第37条の2第1項第1号・第314条の7第2項第2号
都道府県等が個別の第一号寄附金の受領に伴い提供する返礼品等の調達に要する費用の額として総務
大臣が定めるところにより算定した額が、いずれも当該都道府県等が受領する当該第一号寄附金の額の
百分の三十に相当する金額以下であること。
改正後の地方税法抜粋(総務省)
ちなみに、この3割というのは、その自治体が返礼品を仕入れるために支払った金額ということになります。(仕入原価だけでなく、広告費や人件費なども含まれます。)
したがって、実際の販売価格とは異なります。
3. 返礼品は地場産品とすること
このことについても、上記の3割規制とともに総務省が自治体に対して注意してきたことです。
この内容についても地方税法に明記されました。
地方税法
第37条の2第2項第2号・第314条の7第2項第2号
都道府県等が提供する返礼品等が当該都道府県等の区域内において生産された物品又は提供される役務その他これらに類するものであつて、総務大臣が定める基準に適合するものであること。
改正後の地方税法抜粋(総務省)
地場産品とは何かということについては、告示およびQ&Aに具体的な内容が記載されています。
告示には多くの内容は少し読みづらいので、主なものを少しわかりやすく以下に記載します。(以下、A市のふるさと納税を例にして記載します。)
地場産品とは?(A市を例に主なもの)
- A市で生産されたもの
- A市で原材料の主な部分を生産しているもの
- A市で製造、加工の主要部分を行い、そのことで付加価値が生じているもの
- A市のキャラクターグッズ、オリジナルグッズ
- A市に関連のあるサービス
総務省のQ&Aをもとに簡単に説明したいと思います。
1. A市で生産されたもの
これはいうまでもなく、その地域で生産されたものということですので、農産物や畜産物が良い例です。
これまでは、自分の市町村で生産していなくても、返礼品にしていたところがありましたが、そういったことはなくなるので、生産している地域のものは価値が高くなるかもしれません。
2. A市で原材料の主な部分を生産しているもの
例えば、ジュースの原材料となる果物を栽培しているとか、アイスクリームの原料となる牛乳を生産している場合に、ジュースやアイスクリームを返礼品にすることができます。
Q&Aの例では、原材料の9割以上を生産しているならOKで、1割だとダメなような記載がありました。
ビールの原材料となるホップを作っている地域だと、多くのビールが返礼品になるかもしれません。
3. A市で製造、加工の主要部分を行い、そのことで付加価値が生じているもの
原材料でなく、加工した製品の方に価値があれば、それが返礼品にできるということです。
A市の事業者が自社製品として販売しているものが対象となります。
例えば、他の地域のお米を原料として作ったお酒、伝統工芸品などが該当します。
和菓子やケーキ、地ビールなども該当すると考えられます。
ただし、複数の地域で作っていて、全国展開しているようなものは該当しないようです。
4. A市のキャラクターグッズ、オリジナルグッズ
ゆるキャラグッズや、その地域のスポーツチームのグッズなどが該当します。
5. A市に関連のあるサービス
A市へ旅行するための旅行券、A市の特産品を扱うアンテナショップ(他の区域にあってもよい)などが該当します。
ただし、A市のブランド牛を扱う東京のレストランでの食事券やグルメポイントはダメです。
また、姉妹都市や友好都市のものは、地場産品とは認められないことになりました。
そのほか、A市の特産品に合わせてパソコンや家電などを返礼品とすることもNGです。メインとなるものが地場産品であることが必要です。
【参考】ふるさと納税に係る指定制度の運用についてのQ&Aについて(総務省)
改正内容に関する課題
これまでは返礼品に規制がなく、自治体はほぼ自由に返礼品を出していましたが、今回はしっかりとした基準が設けられました。
このことで、返礼品合戦が終わって、適正な水準かつ地場産品が返礼品となりますので、家電欲しさにどこでもいいから、ふるさと納税をするといった人が少なくなると考えられます。
また、返礼品が純粋に地場産品になることで、自分の好きなブランド牛をしっかりと育成してほしいといった応援の気持ちを込めて、返礼品にブランド牛をもらいながら、ふるさと納税をすることができます。
一方で、これまでは基準がないために、ふるさと納税の趣旨から静観していた都心の市町村が、ふるさと納税に参入することも考えられます。
都心へ旅行する人も多く、旅行券などの需要は多いと考えられますし、都心で成功していて有名になったお菓子や商品も多いと思います。
都心で成功している商品は商品力が強く、もともとPRもしているので、全国的に知られていて、需要も高く、有利だと思います。
こういったことで、地方へ流れていたふるさと納税の資金が都心へも向かう可能性があります。
東京都は申請せず
ふるさと納税が指定制度になったわけですが、東京都は指定を受けるための申請をしませんでした。
東京都からは、ふるさと納税制度によって億単位の税収が減少していたため、制度自体に反対していたこともあり、その意思表示とも受け取れますが、一定の制限が設けられたことから、これ以上に税収が減少しないと考えたのかもしれません。
東京都が本気でふるさと納税に取り組めば、地方都市は太刀打ちできないでしょうし、大人の対応と言えるかもしれません。
高額の家電や商品券、クーポンはなし!
今回の改正によって、基本的に家電や旅行券(行き先が限定されていないもの)やアマゾンギフト券、モンベルのバウチャーなどはなくなりました。
以下、考え方も含めて返礼品について簡単に説明します。
家電やアップル製品など
返礼品は地場産品ということですが、家電などでもその土地を拠点にした生産物は家電でも返礼品になり得ると思います。
ただし、支店が全国にあるような企業の製品だと、条件から外れると考えられます。
そういった点から、まずメイドインジャパンは最低条件だと思いますし、日本製であっても大手企業の製品だと、工場が複数の地域にあるため、難しいように思います。
家電とは少し違うかもしれませんが、バーミキュラを作っている愛知ドビーのように地元に根付いた叩き上げのような企業の製品など、ふるさと納税に馴染むような気がします。
当然、アップル製品はNGですし、地元の特産物との抱き合わせも規制されています。
家電については、ほとんどが対象外になると考えられます。
商品券やクーポン
換金性の高いクーポン、バウチャーですが、これまで人気の高かったものは、日本旅行の旅行券やモンベルのバウチャーなどです。
旅行券自体は認められていますが、汎用性が高く使い道が限定されていないもの、金券に近いものは、返礼品にはならないと考えられます。
宿泊する旅館などが決まっていれば返礼品になりますので、どこかへ出かけることを前提に、旅行券を目当てにふるさと納税することはできると思います。
モンベル製品やバウチャーについては、家電と同様にその地域で限定して作っているものなどでないと認められないでしょう。
商品券も、ほとんどがなくなると考えられます。
ふるさと納税は2019年10月以降がおすすめ
2019年6月以降は、ふるさと納税の指定を受けられなかった市町村が出てきますし、指定期間が4ヶ月の市町村は当面は9月までということになります。
2019年10月になると、2019年中にふるさと納税できる市町村が確定しますので、ふるさと納税をするのはそれ以降でも良いと思います。
2019年中に寄付をすれば、翌年の所得税・住民税から控除されますので、慌てる必要はありません。
ふるさと納税のポータルサイトに指定を受けていない市町村の返礼品が掲載されていることはないと思いますが、自分でも注意することが大切です。
6月以降は様子見で、10月以降に再開すると安全です。
まとめ
改正されたふるさと納税の内容と、指定されなかった市町村について説明してきました。
これまで、お買い物のように返礼品を選ぶことができたわけですが、今後は制度の趣旨にそった内容となり、返礼品も限られます。
とはいえ、地域の特産物、ブランド牛や果物、海産物は地場産品として残ります。
個人的には、おいしいものを作っている地域には頑張ってもらいたいので、ふるさと納税を続けるつもりです。
なお、繰り返しになりますが、2019年6月以降は制度が変更になりますので、ふるさと納税した金額が税金から控除されないといったことのないよう、注意してくださいね。