ふるさと納税の返礼品・特産品が一時所得になるって知っていますか?所得税法では様々なものが所得換算されます。申告義務があったのに知らなかったではすみません。
今回はふるさと納税の返礼品と一時所得について、わかりやすく解説します。
ふるさと納税の返礼品が所得になる?どういうこと?
ふるさと納税は多くの人が利用していると思いますが、実はその返礼品は所得に換算されるものなのです。
所得とは金銭だけでなく、「経済的利益」を含むのです。
この経済的利益とは、所得税法第36条1項に規定されている「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益」のことをいいます。
所得税法(抜粋)
第三十六条 その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。
所得税法(電子政府の総合窓口 e-Gov)
つまり、金銭でなくても利益を得た時には所得に換算しなければならないのです。
例えば、3万円のふるさと納税をして、1万円相当の牛肉をお礼の品としてもらった場合、この1万円が所得になるというわけです。
ふるさと納税の返礼品・特産品は一時所得として扱われる
返礼品は所得に換算されるわけですが、その点について、国税庁は以下のように説明しています。
ふるさと納税の謝礼として受ける特産品に係る経済的利益については、所得税法第9条《非課税所得》に規定する非課税所得のいずれにも該当せず、また、地方公共団体は法人とされていますので(地方自治法第2条第1項)、法人からの贈与により取得するものと考えられます。
したがって、特産品に係る経済的利益は一時所得に該当します(所得税法第34条、所得税基本通達34-1(5))。
出典:「ふるさと納税」を支出した者が地方公共団体から謝礼を受けた場合の課税関係(国税庁質疑応答事例)
ふるさと納税の返礼品は非課税所得ではなく、一時所得に該当するということをはっきりと説明しています。
一時所得とは
一時所得とは、給与などの継続的なものではなく、一時的な所得のことを言います。
例えば、以下のものです。
一時所得の例
- 福引などの賞金・賞品(宝くじ除く)
- 競馬や競輪で儲けたお金
- 生命保険や損害保険の満期返戻金・解約返礼金
- 法人から受け取る金品
ふるさと納税の返礼品は、地方自治体という法人から受け取るものであり、一時所得に該当します。
一時所得は50万円以下なら所得0円に換算
一時所得の計算は以下のようになります。
一時所得 = 収入 - 収入を得るための支出(必要経費) - 特別控除(最高50万円)
例えば、ふるさと納税で1万円相当の返礼品をもらった場合、以下のように計算します。
一時所得 = 1万円 - 0円 - 1万円 = 0円
特別控除が最高で50万円まで認められるので、50万円以下なら、一時所得は0円となり、課税の対象にはなりません。また、実際に課税される金額は一時所得の1/2の金額になります。
100万円の返礼品をもらった場合は、以下のようになります。
一時所得=100万円−50万円=50万円
課税所得 = 50万円 × 1/2 = 25万円
ここで注意したいのは、ふるさと納税として寄付した金額は差し引けないのか、ということです。
1万円の返礼品を得るために3万円支出しているのですから、その分を差しひければ特別控除は関係なく一時所得は0円になります。
残念ながら、寄付金は「収入を得るための支出」(必要経費)に該当しないため、差し引くことはできません。
【参考】ふるさと納税をした場合に受け取った返礼品について申告する必要がありますか?(さいたま市)
ふるさと納税を〇〇円以上した人は申告が必要な可能性あり
ふるさと納税の返礼品は一時所得に該当し、その一時所得には50万円の特別控除があることが分かったと思います。
では、申告の必要がある人はどういった人なのでしょうか。
サラリーマンの場合は副業などせず1か所から給与をもらっていて、年収が2000万円以下の場合は、他の所得が20万円以下であれば申告は不要です。
一時所得は前述のとおり、最大50万円の特別控除があり、その上で1/2の金額が課税される所得になります。
したがって、一時所得の1/2の金額が20万円以下であれば、申告をする必要はありません。
【参考】サラリーマンに生命保険の満期返戻金などの一時所得があった場合(国税庁タックスアンサー)
ふるさと納税の返礼品のみで申告が必要な人とは?
サラリーマンの人が返礼品だけで申告する場合、その人の年収はいくら程度になるのでしょうか。計算してみたいと思います。
返礼品を一時所得として申告するということは、返礼品の価値が90万円より大きい人になります。
(返礼品90万円 - 特別控除50万円)× 1/2 = 20万円
総務省は返礼品は寄付額の3割までという方針を出していますので、90万円を3割としてふるさと納税の金額を計算します。
90万円 ÷ 0.3 = 300万円
300万円より大きなふるさと納税をした人になります。
300万円分のふるさと納税を所得税・住民税から控除できる人は年収ベースだと7000万円以上の人となります。
7000万円以上の収入がある人は、毎年確定申告をしなければなりませんし、税理士さんなどがついていると思います。
年末調整の対象となる人が、返礼品のみで申告の対象になることはありません。
生命保険の返戻金をもらった人や死亡保険金を受け取った人は注意!
上記のように、返礼品以外に一時所得に該当するものがない場合は、高所得者でないかぎり、申告の心配はありません。
ただし、返礼品をもらった年に他の一時所得がある場合は、合計して一時所得を計算しなければいけません。
一時所得として高額になりがちなのが、生命保険の満期返戻金や解約返戻金、そして死亡保険金を受け取った場合です。
生命保険に関連して支払われるものは、保険料として払った金額を差し引くことができますので、残額に対して課税されることになります。
特に死亡保険金は保険料を支払っている人が保険金の受取人の場合は、受け取った人の一時所得となりますので注意してください。
課税される人は返礼品をもらった人
課税されるの人は返礼品をもらった人です。
ふるさと納税の返礼品を人に贈ったりする人もいるでしょう。そういった場合には受け取った人が課税されることになります。
税務署は返礼品までわかってる?申告しないと税務調査がくる?
税務署の動向については、推測も含めて記述したいと思います。
ふるさと納税をした人は確定申告かワンストップ特例で税金の控除をするわけですから、税務署が寄付金の額や寄付した先の自治体を把握することは可能です。
とはいえ、申告書には返礼品まで記載しません。ふるさと納税をした人の中には返礼品を受け取らず、単に寄付をしただけという人もいますし、返礼品の有無やその内容については申告書からは読み取ることができません。
だからといって、返礼品の内容がばれないかといったら、そういうことではありません。
税務署は返礼品の内容について調査できるからです。寄付先の自治体などで実態を把握した上で、個人に税務調査が入ることも十分に考えられます。
特に数百万円以上の寄付をしている人は、ふるさと納税の内容を整理して申告をしておく必要があるでしょう。
申告の方法
申告については、一般的で合理的だと考えられる方法をお示ししたいと思います。
まずは以下の点について確認します。
申告前に確認すること
- 返礼品をもらった時期
- 返礼品の価値
1. 返礼品をもらった時期について
所得として申告する場合は、受け取った時期が重要です。
年末にふるさと納税をして翌年に返礼品が届く場合や、いったんポイントにしておいて2年以内にそのポイントを使うことで返礼品がもらえるといったことがあります。
こういった場合、いつ確定申告をすればよいのでしょうか。所得税法基本通達に以下のような記載があります。
所得税法基本通達
36-13 一時所得の総収入金額の収入すべき時期は、その支払を受けた日によるものとする。ただし、その支払を受けるべき金額がその日前に支払者から通知されているものについては、当該通知を受けた日により、第183条第2項《生命保険契約等に基づく一時金に係る一時所得の金額の計算》に規定する生命保険契約等に基づく一時金又は令第184条第4項《損害保険契約等に基づく満期返戻金等》に規定する損害保険契約等に基づく満期返戻金等のようなものについては、その支払を受けるべき事実が生じた日による。(平11課所4-1改正)
出典:国税庁(法令解釈通達)
返礼品に当てはめると収入すべき時期は、返礼品を受け取った日、または返礼品の通知を受け取った日になります。
通知をどのように解釈するか難しいところもありますが、寄付金の受領書を受け取った時点で寄付したことが確定しますので、返礼品の送付も確定したと言えそうです。
また、ポイント制の場合はそのポイントを使うまでは、実際に返礼品を手にしていませんし、うっかりポイントが失効してしまえば、一時所得を得ることはできません。したがって、ポイントを使って返礼品を受け取ったときが収入の時期になると考えられます。
そのほか、年末にギリギリでふるさと納税をした場合は、受領書は1月になってから届きますので、翌年の所得にするものと考えられます。
2. 返礼品の価値について
次に、返礼品がいくら程度のものなのか把握します。
ふるさと納税の申し込み画面に返礼品がいくら相当であるか記載があれば、それに従うといいでしょう。
そうでなければ、実際に販売している価格を調べておきます。ネットなどの場合は、画面のキャプチャーを取るなどしておきましょう。
概ねの値段がわかったら、一覧表にそれぞれの価格を入力して合計し、その金額を所得とします。
返礼品の数が多い、何をもらったか覚えていない場合などは、把握できるものだけ価格を調査した上で、その金額とふるさと納税の金額の割合を計算する方法が考えられます。
例えば、総額100万円のふるさと納税について、70万円分につき返礼品が21万円だとわかったとします。
この場合、21万円/70万円=0.3となりますので、寄付金に対する返礼品の割合は3割です。
これを100万円全体に乗じて、30万円を一時所得とします。
また、総務省が返礼品は3割が限度だと方針を出していますので、ほとんどの市町村はそれを守っています。
この3割を根拠にしても良いかもしれません。(実際には返礼品はの割合は3割に満たないものが多いと思います)
申告することが大切
返礼品を所得として申告するのは義務ですので、根拠は自身でしっかりと把握していなければいけません。
とはいえ、そういった意識はまだ浸透していない状態ですので、多少根拠が怪しくても、客観的に納得できる内容で申告をしていれば、問題ないと思われます。
返礼品の価値については、「なんとなく」ではなく、一応の説明がつく根拠を持っておくことが必要です。
なお、ふるさと納税の金額などによって、手法が異なるかもしれませんので、申告する場合には事前に税務署へ電話などで相談することをお勧めします。
課税されてもふるさと納税した方がいいのか?
ふるさと納税は、寄付した金額から2千円を控除した金額が所得税や住民税から控除されるので、申告をしなければ、返礼品は丸儲けということになります。
つまり、ある程度の税金を払っても、実際に購入するよりはお得だということです。
ただし、高額所得者だと所得税の税率は45%、住民税は10%で合計で55%の税率です。300万円の返礼品をもらった場合、単純計算で55%分は税金になってしまいます。
必要なものを返礼品としてもらうのであれば、課税されたとしても、十分にお得で節税になりますが、不要なものをもらうのであれば、あまりお勧めできません。
まとめ
とてもお得なふるさと納税ですが、多くの返礼品を受け取る場合は一時所得としての申告が必要となります。
また、ふるさと納税以外に多くの一時所得を得た年は、返礼品の金額も加算して計算しますので、返礼品が少なくても、課税されることがあります。
一般的には返礼品で一時所得の申告を要する人は少ないと思いますが、制度だけは理解しておきましょう。