
老後の資金を確保する上で重要な確定拠出年金ですが、NISAも投資をする上でお得な制度ですので、考慮しておきたいところです。特に積立NISAは長期間に渡って優遇を受けられる制度です。
個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)もNISA(ニーサ)もしっかりと理解して資産運用に役立てましょう!
確定拠出年金とNISAはどちらがお得?
確定拠出年金(この記事では個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)のことをいいます。)と、2014年からスタートしたNISA。
どちらも非課税などの優遇を受けられる投資関連の制度ですが、いったいどちらの方がお得なのでしょうか。
ここではNISAの基本と、2018年1月から3種類になるNISAのバリエーションについて解説しながら、両者のメリットをポイントに絞って比較します。
NISAの基本は「非課税投資枠」と「非課税期間」
NISA(ニーサ)とは、2014年からスタートした「少額投資非課税制度」を指します。この制度の最も基本となるのは「非課税投資枠」と「非課税期間」の2点です。
非課税投資枠とは
非課税投資枠とは投資によって得られる利益が非課税になる金額の枠を指します。
通常、株式や投資信託の運用によって得られる利益が20万円を超えると課税対象となり、所得税と住民税を合わせて20%(2014年から2037年までは20.315%)の税率が課せられてしまいます。
しかしNISAの専用口座を利用すると、年間120万円までの投資金額であれば、そこから生まれた利益を全額非課税で受け取ることができるのです。
非課税期間とは
非課税期間とは、この非課税投資枠を利用できる期間を指します。非課税期間は最大5年と定められています。
つまりNISAとは年間120万円×5年間=600万円の資産を運用して得られた利益について、税金の全額免除が受けられる制度というわけです。
例えば、以下のように運用したとします。
- 毎月10万円を5年間積み立て→総額600万円
- 5%の利回りで運用
この場合、5年後の資産は以下のようになります。
- 5年後の総資産金額は約683万円
- 運用益は83万円
このときに運用益に対する税金は、NISAを利用するかしないかで、以下のように異なります。
NISA利用 | NISA利用しない | |
---|---|---|
税金 | 0円 | 17万円 |
非課税期間が終わったときの選択肢は原則3つ
5年間の非課税期間が終わると、NISAの利用者は次の3つの選択肢から資産の取り扱いを決めることになります。
期間終了後の3つの選択肢
- ロールオーバーを行う。
- 課税口座(通常の運用口座)に移す。
- 売却する。

NISA利用1年目の非課税投資枠120万円が5年間の非課税期間を終えると、6年目に新たな非課税投資枠120万円を利用できるようになります。
ロールオーバーとは非課税期間を終えた資産を、この新たな非課税投資枠に移し入れることを指します。
この場合の新規で追加の投資をすることはできません。つまりNISAで運用できる総資産金額は原則として600万円が上限になるということです。
なお、運用によって非課税期間終了時に120万円を超えていても、全額をロールオーバーすることができます。
3種類のNISAの違いを理解しよう
NISAは「非課税投資枠の再利用ができない」
NISAには一つ大きな制約があります。それは「非課税投資枠の再利用ができない」という点です。
例えば120万円の非課税投資枠が残っている状態で10万円の投資信託を購入すると、残りの非課税投資枠は110万円となります。
ここで今購入した10万円の投資信託を売却しても、非課税投資枠は110万円のまま戻りません。非課税投資枠が120万円になるのは各年の初めだけです。
したがって、NISAでの資産運用は計画的に行う必要があります。
またNISAには全部で3種類のバリエーションがあり、どのバリエーションを選ぶかも運用する資産の性質によって考慮しなければなりません。
種類 | 概要 | 投資枠 | 期間 |
---|---|---|---|
NISA | 商品が多い | 年120万円(5年600万円) | 5年間 |
ジュニア NISA |
19歳以下を対象 | 年80万円(5年400万円) | 5年間 |
つみたて NISA |
長期の積立用 | 年40万円(20年800万円) | 20年間 |
この3種類のバリエーションについて、それぞれについて詳しくみていきましょう。
自由度の高さが魅力!NISA
対象者 | 日本在住の20歳以上(口座開設年の1月1日時点) |
---|---|
金融機関変更 | 可能 |
取引者 | 口座名義人(本人) |
非課税投資枠 | 新規投資額で毎年120万円(5年間で600万円) |
非課税期間 | 最長5年間 |
対象商品 | 上場株式、ETF、投資信託など |
ロールオーバー | 可 |
払出制限 | なし |
他NISAとの併用 | ジュニアNISA |
標準的なNISAの特徴は、自由度の高さです。
対象商品も上場株式、ETF、投資信託など様々な選択肢があり、ロールオーバーも可能。
払出制限もないため、もし突然お金が必要になった場合でも、特別な手続きをせずに払出を行うことができます。
また1年あたりの非課税投資枠が3種類のNISAの中で最も大きい点も強みです。
結婚資金や住宅購入資金、海外旅行資金など、どちらかというと短期的に必要になる資産を節税しながら形成するという使い方に適しています。
子供のための資産で節税!ジュニアNISA
対象者 | 日本在住の0歳〜19歳(口座開設年の1月1日時点) |
---|---|
金融機関変更 | 不可 |
取引者 | 原則、親権者など |
非課税投資枠 | 新規投資額で毎年80万円(5年間で400万円) |
非課税期間 | 最長5年間 |
対象商品 | 上場株式、ETF、投資信託など |
ロールオーバー | 可 |
払出制限 | 18歳まで払出不可 |
他NISAとの併用 | NISA、つみたてNISA |
ジュニアNISAの最も大きな特徴は、払出制限が設けられている点です。
この特徴のために他のNISAに比べると資産としての動かしにくくなっています。
したがってジュニアNISAの口座には、子供が18歳になるまで動かす必要のない資産を入れる必要があります。
例えば子供の大学の授業料や一人暮らしのための生活資金などの資産を、節税しながら形成するという使い方に適しています。
またジュニアNISAは、NISA、もしくは次に触れるつみたてNISAとの併用ができます。
そのため、いざというときに使えるお金はNISAやつみたてNISAの口座に入れておいて、使わなくても済む金額をジュニアNISAの口座に入れるといった使い分けも可能です。
非課税期間の長さが魅力!つみたてNISA
対象者 | 日本在住の20歳以上(口座開設年の1月1日時点) |
---|---|
金融機関変更 | 可 |
取引者 | 口座名義人(本人) |
非課税投資枠 | 新規投資額で毎年40万円(20年間で800万円) |
非課税期間 | 最長20年間 |
対象商品 | 一定の要件を満たした投資信託など |
ロールオーバー | 不可 |
払出制限 | なし |
他NISAとの併用 | ジュニアNISA |
つみたてNISAの最大の特徴は20年という非課税期間の長さです。
また年間の非課税投資枠は40万円と3つの中で最小であるものの、40万円×20年=800万円と最終的な運用金額は最大となっています。
ロールオーバーができないため、20年の非課税期間が終了すると課税口座へ移すか、売却するかの選択肢しかありません。
しかし、非課税期間の長さは資産の運用期間の長さでもあり、最終的な運用金額の大きさはそこから生まれる利益の大きさでもあります。
したがって、老後の生活資金など、長期的な視点での資産形成を目指すのであれば、つみたてNISAが適しているといえるでしょう。
なお、「一定の要件を満たした投資信託など」とは、インデックス連動型の商品など、長期運用に適した低コスト低リスクの商品を指します。
選択の幅は狭くなりますが、初めから高コスト高リスクの商品が除外されているということでもあるので、大きなデメリットにはなりません。
確定拠出年金とNISAは「合わせ技」が正解
確定拠出年金とNISAの違いは「節税効果」と「自由度」
ここまでの内容を踏まえつつ、確定拠出年金とNISAのポイントとなる「節税効果」と「自由度」について比較しました。
確定拠出年金 | NISA | ||
---|---|---|---|
節税効果 | 開始時 | あり | なし |
運用時 | あり | あり | |
受取時 | あり | あり | |
自由度 | 換金性 | 低い | 高い |
対象商品 | 少ない | 多い | |
期間 | 60歳まで | 5年、もしくは20年 |
開始時の節税効果
投資を開始したタイミングでの両者の節税効果は、確定拠出年金に軍配が上がります。
確定拠出年金は拠出金額全てが所得控除となるので、所得税と住民税の節税が可能となるのに対し、NISAでは口座に入金して投資を開始しても特別な節税効果はありません。
運用時の節税効果
運用が始まり、利益が出始めるタイミングの節税効果については、確定拠出年金もNISAも得られる利益については非課税となるため、同じということになります。
受取時の節税効果
確定拠出年金の受け取りには所得税・住民税が課せられますが、同時に公的年金の控除制度が利用できるため、非課税に近い状態になる可能性があります。
一方NISAは運用時と同様、受取時も非課税となります。
したがって受取時の節税効果について両者を比較した場合、若干ではありますがNISAの方が優れているといえます。
以上のことから、節税効果に関しては確定拠出年金の方にメリットが大きいということがわかります。
換金性の自由度
確定拠出年金の換金性は60歳以上にならないと受け取れないため、低いといえます。
一方NISAはジュニアNISAを除けば換金性は非常に高く、いつでも任意で取り崩しが可能です。
対象商品の自由度
確定拠出年金の対象商品は例えば、楽天証券では32本、SBI証券では67本などとなっていますが、今後は35本を上限にすることが決まっています。現在35本より多い商品を扱っている証券会社などは徐々に減らして行くこととなります。
一方NISAの対象商品はつみたてNISAを除けば非常に幅広く、より自由度の高い資産運用を行うことができます。
期間の自由度
最大で40年以上も利用できる確定拠出年金に対し、NISAは最大5年もしくは20年に限定されています。
したがって「どれだけの期間節税をしながら資産形成をできるか」という観点においては、確定拠出年金の方が自由度が高いといえます。
確定拠出年金とNISAは使い分けよう
投資関連の非課税制度の利用目的は節税なので、資産を投じる優先順位は節税効果が高いものほど上位になります。
確定拠出年金とNISAの比較により、確定拠出年金の方が節税効果が高いことがわかりました。
したがって、節税を第一目的とする場合で、確定拠出年金とNISA、どちらを利用するかを迷ったときは、確定拠出年金から利用を開始するべきです。
ただし、確定拠出年金は自由度の面で劣ります。そのため確定拠出年金は結婚資金や旅行資金、教育資金のように短期的に必要になる資産の形成・運用には不向きです。
一方、NISAはそうした資産にこそ活用するべきでしょう。
確定拠出年金とNISAは「どちらが得か」と考えるではなく、「どう使い分けるか」を考えるのが正解です。
自分の人生プランと照らし合わせて、資産を適切に振り分けるようにしましょう。
確定拠出年金とNISAは「どちらも」お得!
確定拠出年金とNISAはどちらか一方が完全に優れているというわけではなく、使いようによってはどちらもお得になる制度です。
両者の違いをしっかり理解したうえで、自分にとってのベストの使い分けを導き出しましょう。