定年後を楽しく過ごせるかどうかは、定年前の準備が重要
人生を大きく分けると、幼少期、学生時代、社会人、それに老後となります。
日本では、社会人の多くがサラリーマン(会社員)です。
そのため、多くの方は定年後に老後を迎えることになります
専門学校や大学を卒業(20~22才)して定年(60才)まで働き続けた場合、サラリーマンとして過ごす期間は約40年となります。
誕生から学生を卒業するまでの約20年よりも、およそ2倍の期間をサラリーマンとして生きることになります。
それでは、老後はどうでしょうか。
仮に日本人男性の平均寿命である81才まで生きたとすると、その期間は約20年になります。
しかし今は人生100年時代と言われ、平均寿命よりもずっと長生きする人も増えています。
仮に100才まで生きたとすると、老後は40年にも及びます。
つまりそれは、自分の人生の多くを費やしてきたと思っていたサラリーマン時代と、変わらぬ期間を定年後に過ごす可能性があるということです。
定年後はゆっくりしたいと言うが・・
仕事を辞めたら、のんびりと暮らしたい。
定年後をこのように語る人は多いですが、実際に定年を迎えた元サラリーマンの多くは、悠々自適に過ごしているはずの時間を持て余し、途方に暮れています。
サラリーマンの時は、特に趣味などがなくても、週に1~2日しかない休みを過ごすのに、退屈だと感じることも少なかったと思います。
むしろ、何もせずにダラダラと過ごせる時間に、至福を感じていたのではないでしょうか。
しかし、定年後は365日毎日が休みになります。
ゆっくりしたいという気持ちは、日々を忙しなく生きているからこの芽生えるものです。
毎日気が済むまで自由にできる時間があると、ゆっくりすることが気分転換やストレス解消にならなくなります。
それどころか、予定がない毎日を苦痛に感じるようになるのです。
定年するまでにするべき準備とは
定年後はゆっくりしたいという夢は、今のうちに捨てておきましょう。
それは願わずとも、必然的にそうなるからです。
それよりも、大切なのは「生きがい」を見つけておくこと。
定年を迎えて会社を退職するということは、それまで仕事中心だった生き方を大きく変える必要があります。
つまり、仕事が生きがいだった生き方から、仕事以外の生きがいを持つ生き方にシフトしなくてはいけません。
きょういくときょうよう※
定年後に必要なのは、この2つだと言われています。
ただし、きょういくは教育、きょうようは教養、ではありません。
きょういくとは「今日、行くところがある」、きょうようは「今日用事がある」と言う意味です。
しかしこの場合、スーパーで買い物をしたり、郵便局へ郵便物を出しに行くなどの予定は含めません。
なぜなら、それらは日常生活を送る上で当たり前に行うことだからです。
ここで言うきょういくときょうようは、知人や地域の人などと繋がりが持てるような場所へ自ら出向き、同じ時間を過ごすことがとても大切だとしています。
定年後、何に生きがいを見出したらよいかわからないという人は、まずはきょういくときょうようを考えてみることから始めるのがよいでしょう。
※「100歳になっても脳を元気に動かす習慣術」多湖輝(たごあきら)著書より
夫婦の在り方を考える
サラリーマン時代は仕事に没頭し、家庭のことを奥さんに任せてきた分、定年後は2人で旅行に出かけたり、共通の趣味を通じて仲良く暮らしたい。
このように考えている男性は多いと言われています。
しかし、奥さん側に話を聞いてみると、必ずしも同じ思いを抱いているとは限りません。
むしろ、夫がサラリーマンの時は、朝出社すれば夜まで帰ってこないので、その時間は自分の自由に使うことができていたのに、定年後は夫の分の昼食作りが増えたり、外出するにもどこに行くのか詮索されるのが苦痛と感じているようです。
ある調査によって、定年後の夫婦は同じ時間を過ごすよりも、それぞれ自由に過ごした方が生活が上手くいくと考えていることがわかりました。
しかも、その傾向は夫に比べて妻の方が顕著であるとされています。
つまり、定年後は奥さんと過ごす時間が増えるから、暇にはならないだろうと思っていると、一人で過ごしたい奥さんから煙たがられる可能性が出てきます。
勿論、全ての奥さんがこのように考えているとは限りませんが、事前に定年後に対するプランや意見を交換し、お互いが窮屈にならないような生活の仕方を考えておくことが大切になります。
老後資金は多いに越したことはない
一般的に、老後資金の目安は3,000万円と言われています。
これは、年金の月額が19~20万円程度なのに対し、高齢者無職世帯(男性65才、女性60才の場合)の平均的な支出が27万円に上ることから、月々の不足(8万円)を老後資金で補う場合、20年で1,920万円、25年なら2,400万円が必要となるからです。
ただし、これらはあくまでも生活費に対する試算なので、自宅の補修や車の買い替えなどの費用は含まれていません。
よって、少し多めに見積もって3,000万円は用意しておいた方がよい、と考えられています。
また、老後にゆとりある生活を送りたいのであれば、月に35万円ほどの支出が見込まれるとも言われています。
そうなると、さらに老後資金として準備するべきお金は多くなりますよね。
このようなことから、定年後を楽しく過ごすためには、定年前から資産の形成に取り組むことが重要だと言えます。
老後の過ごし方
趣味
趣味とは、自分が楽しいと思うことを愛おしむことです。
定年後、自由になった時間を趣味に生かしたいという人は多いですが、反面何を趣味にしたらよいのか悩む人は少なくありません。
趣味を見つけるには、興味のあることを始めてみるのがよいでしょう。
始めてみて合わないなと思ったら、止めて次に興味が沸いたことに挑戦します。
大切なのは「やってみたいな」と思うことは行動に移すこと。
一度目にピンと来なくても、そのうちに長く付き合える趣味に出会うことができるでしょう。
ここでは、老後の趣味としてお勧めのものをいくつかピックアップしておきますので、ぜひ参考になさってみて下さい。
- 囲碁
- 読書
- カメラ
- ガーデニングや家庭菜園
- 盆栽
- 楽器演奏
- 料理
- ブログ作成
- 釣り
- カラオケ
- サイクリング
- ハイキング、登山
- パワースポット巡り
- マジック、手品 など
ボランティアを趣味にする
老後にボランティアを始めたいと思っている人も多いですよね。
ボランティアは内容によって比較的すぐに参加できるものと、資格などがないと参加できないものがあります。
身近なものなら、小学生の登下校時の見守りをPTAが募集していることがあります。
まずは地域に目を向け、自分ができそうなことから始めてみるのがよいでしょう。
また、美術館や博物館などでガイドを行っているのは学芸員だけとは限らず、知識を持った高齢者が定年後にボランティアとして参加しているケースもあります。
サラリーマン時代の自身のスキルを活かしたボランティア活動をしたいと考えている人は、定年前から自分に合ったボランティアを募集しているところを探し、事前に参加して経験を積んでおくと、定年後にスムーズにボランティア活動に移行していけるでしょう。
運動
趣味と並んで、定年後に始めたいことの一つに運動があります。
加齢に伴い足腰が弱ってきますし、心肺機能を維持するには運動は積極的に行っておきたいものですが、無理をすると怪我の原因になるため、ペースを守って行うことが大切です。
老後に始めたい運動としてお勧めなのは、次のようなものになります。
- ヨガ
- 社交ダンス
- ウォーキング
- 卓球
- ゴルフ など
健康維持には筋トレが効果的
年を重ねるとどんどん筋力は衰え、80才になると30~40%が減少すると言われています。
また、定年後はそれまでの規則正しい生活が崩れ、肥満や生活習慣病の発症リスクも高まります。
筋肉は何才になっても鍛えて増やすことができるため、定年後に筋トレで健康を管理するのは大変お勧めだと言えます。
仕事
「定年後再雇用制度」が施行され、定年が65才未満の会社であっても、65才まで雇用の延長もしくは再雇用を希望することができます。(※1)
定年後の生活を充実させるには、仕事以外の生きがいを見つけることが大切だと言うことはわかっていても、なかなかそう簡単に上手くはいかない場合もあります。
そのような時は、一度リタイアした社会人に戻ってみるのもよいでしょう。
「結局仕事か・・」と思うかも知れませんが、働けばその分お金になるので老後資金を増やすこともできますし、何より社会の一員として人と繋がり続けることができます。
老化の防止にもなることから、定年後の過ごし方の一つの方法として仕事を考えてみるのもよいでしょう。
(※1)雇用形態の内容については、定年前と必ずしも同じとは限らず、嘱託やパートなど、会社によって提示が異なる場合があります。
また、契約年数も65才までの5年ではなく、1年ごとの更新もあります。
シルバー人材センターへの登録
誰もが一度くらい名前を聞いたことがあると思いますが、シルバー人材センターという社団法人が全国の市町村にあります。
シルバー人材センターでは、高齢者が生きがいを得るための就業を目的としており、企業や公共団体、家庭などから発注された業務を会員に振り分けています。
業務内容には、清掃や雑草取り、ペンキ塗り、家事援助、チラシ配り、包装や梱包と言った一般的な作業から、パソコン入力や調査・集計、経理などの事務作業、ビルやアパート、公園、スポーツ施設などの管理、翻訳などの専門的な知
識が必要な技術作業など様々な種類があり、個人の希望や能力に応じた仕事を行うことができます。
なお、一定の収入の保障はないものの、全国平均で月8~10日の就業で、3~5万円ほどの収入を得ているとサイト内では説明がされています。
金額は少ないように感じるかも知れませんが、シルバー人材センターのメリットには会員同士の交流や、地域の活性化に貢献することなどがあり、会社に勤めて得る収入とはまた違った喜びがあります。
シルバー人材センター:http://www.zsjc.or.jp/
定年後にしてはいけないこと
資格をとる
定年後、第二の人生としてそれまでとは違う職種に就いてみたい、キャリアを生かしてよりステップアップしたいなど、様々な理由で資格を取りに行く人がいますが、実はあまりお勧めできません。
特に新規の資格の場合、採用する側の企業としては扱いづらいと感じるのが現状のようです。
また、資格によりけりですが、教室に通うとなると月謝は決して安くはありませんよね。
老後資金によほど余裕がある場合なら問題ありませんが、生活を切り詰めてまで資格を取ることに、定年後はあまりメリットがないと言われています。
株などの投資
定年後は、有り余る時間を使って、老後資金を少しでも増やすために株を始めたいという人も少なくありません。
しかし、株で儲けを出すのはそう簡単なことではありません。
今でこそ何億という資産を築いている人でも、それまでには幾度となく失敗を経験している可能性があります。
株で儲けるには経験がとても大切です。
そしてその経験は1~2年のものではなく、10~20年という長い年月を有して培ったものでないといけません。
当てずっぽうで買った株が思わぬ値を上げたということがないとは言い切れませんが、老後の資金を使ってまでリスクを負って行うべきことではないと言えます。
田舎暮らし
テレビ番組などの影響もあり、定年後は夫婦で田舎暮らしをしたいと思っていませんか?
田舎暮らしは、都会よりもお金がかからず、野菜などを自分で育てながら、自然に囲まれた生活が送れると言うのが売りですが、実際にはそんなに甘いものではありません。
田舎は都会に比べて住居費が安いのは事実ですが、ガスや水道などの公共料金は競合が少ないために料金が割高、スーパーで調達する食料や日用品は運送料が上乗せされてやはり割高となっている場合が多くあります。
また、年をとると病気や怪我をしやすくなりますが、病院が近くにないと通院に高額な交通費がかかって生活費を圧迫します。
実際に、定年後に田舎暮らしを始めたことが原因で、老後資金をほとんど使い果たしてしまったというケースが多く存在します。
もし、それでも田舎暮らしが夢だという人は、定年前から候補地を巡り、短期間でも住んで生活してみることをお勧めします。
まとめ
定年後にはとても長い時間があります。
お金や生活のことは、定年する前に入念に考えておくことが重要です。
楽しい老後を送るために、定年前からいろいろと考えてみてください。