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退職して年齢を重ねていくと借金がある人は相続を心配する人もいるでしょう。
今回は家族に借金を残さないよう、すぐに取りかかれる債務整理の方法を解説します。

借金はとても身近にある問題

「遺産相続を巡る親族同士の争いは、お金持ちに限ってのこと」と、思っていませんか?

しかし、遺産とは預貯金や不動産などの財産のみを指す言葉ではなく、借金などの負債も含まれます。

ですが、このように聞いてもなお、「自分は借金などしていないし、これからもしないから大丈夫」だと思っている人は多いでしょう。

今はなくても借金は簡単にできてしまう

自分に借金があることを他人に話す人はそういないため、借金の実態というのはなかなか見えませんが、日本信用情報機構の調査によると、平成30年11月末現在で貸金業者への登録数は約1,800万人に及びます。

これは、およそ7人に1人が借金の経験があることを示しています。

借金と言うと、住宅や自動車など、金額の大きな物をローンで支払っているというイメージを持つ人が多いと思いますが、同じく日本信用情報機構の調査では、借り入れの利用動機は次のようになっています。

借金の理由

  • 1位「趣味・娯楽(レジャー、旅行を含む)費用」
  • 2位「食費」
  • 3位「外食などの遊興費」
  • 4位「医療費」
  • 5位「電気・ガス・水道などの光熱費」

資金需要者等の現状と動向に関する調査結果報告より(日本貸金業協会)

旅行先のホテルの宿泊代をクレジットカードで支払ったり、趣味として集めている物が高額だった時にボーナスなどの後払いで購入することは、誰でも一度くらいは経験があると思います。

また、消費者金融などの自動契約機は、銀行のATMのような仕様なので、つい自分の口座からお金を引き出して使っているような感覚に陥りがちですが、どちらも使った後には当然ながら支払いが待っています。

そもそもがお金が足りなくて困っていたという状況である以上、例えその支払いが済んだとしても、結局またお金が足りなくなり、新たに借金をしてしまうようになるというのは、想像できることですよね。

老後に想定される借金のケース

住宅ローンの返済期間は一般的に30~35年となっており、支払い済となるのが退職後の65才や70才という人も多いのではないでしょうか。

そうなると、仕事を辞めて定期的な収入が途絶えた後も、ローンを支払っていくことになります。

また、50代以降の中高年で、住宅ローン以外の借金を抱えている原因には、若い時の生活費や遊興費などの借金を今も支払い続けていることがあります。

「年齢が上がり、収入が増えた時に返せばいい」と安易に考えて借金をしてしまいがちですが、実際に年齢が上がって収入が増えても、今度は家族が増えてお金がかかるようになり、結局借金を重ねてしまう人が少なくないようです。

借金を家族に残さない債務整理の方法

自身に借金がありながらも、それを打ち明けることができずに亡くなった場合、相続放棄をすれば借金の返済を配偶者や子供が免れられるという話をよく聞きます。

今現在、借金を抱えている人は「そういう方法があるなら、このまま何もせずに自分の死後に色々と片づけてもらおう」と思うかも知れません。

しかし、借金は例え配偶者や子どもが相続放棄をしたとしても、それでこの世からなくなるわけではありません。

配偶者と子どもが相続放棄をすれば、次の法定相続人にあたる父母が返済を引き継ぐことになります。

父母がすでに亡くなっている時は、第3順位となる兄弟姉妹、もしくはその子どもに借金の返済が引き継がれてしまいます。

このようなことを避けるには、あなた自身が生きているうちに債務整理を行い、借金の問題をクリアにしておくことが大切になります。

債務整理には主に次のような方法があります。

任意整理で金利分を大きく減額できる

任意整理とは、弁護士や行政書士が債権者(貸金業者など)に、取引開始時からの履歴を開示してもらい、利息制限法で定められた上限金利(15~20%)を超えた金利で契約をしていた場合には、過払い金の請求や上限金利に引き下げた債務の再計算(引き直し計算と言います)を行い、その上で残った借金が無理なく支払えるよう、月々の支払金額を減額してもらうなどの和解案を債権者に提示するものです。

なお、任意整理は裁判所を通さずに行えるため個人でも可能ですが、法律に知識がある方が当然ながら有利となるため、債務者が弁護士や行政書士に依頼をするのが一般的です。

任意整理で借金が減額される理由

借金の利息については、利息制限法という法律によって上限金利が定められており、上限を超える金利については例え合意があったとしても法律上無効となりますが、利息制限法に違反したからと言って、罰則があるわけではありません。

一方、以前まで貸金業者を規制する法律として施行されていた出資法では(※1)、年29.2%を超える金利を設定すると刑事罰の対象となっていました。

つまり、利息制限法の上限金利の20%と出資法の上限金利である29.2%の間は、処罰の対象にならない曖昧な領域となります。

そして、この間の金利を「グレーゾーン金利」と呼び、債権者は債務者から違法な金利を得ていたのです。

グレーゾーン金利による貸し付けでは、本来は払う必要のない支払い分が生じるため、任意整理によってそれを明らかにすることで、払い過ぎた利息分を元本の支払いに充てたとみなし、借金を減らすことができます。

また、長期間に渡って借金を返済しているケースでは、元本分はとっくに支払いが終わっている可能性もあり、その場合は過払い金が発生していることが想定され、任意整理によって借金が減るだけではなく払い過ぎた分が戻ってくることもあります。

(※1)グレーゾーン金利による多重債務者の増加を防ぐ目的で、2010年に改正貸金業法が施行され、出資法の上限金利が利息制限法と同じ20%へと引き下げられました。

これにより、双方の上限金利が20%と同じとなり、グレーゾーン金利は撤廃されました。

任意整理に向いている人

借金の金額が比較的少額で、サラリーマンなど一定の収入を確保することができる人、長期的に計画を立てて返済が可能な人は任意整理に向いていると言われています。

任意整理は、大体3~5年での返済計画を立てますが、難しい場合はもう少し期間を長くしてもらうことも可能なようです。

また、住宅や自動車などの高額ローンを抱えている場合、それらのローン会社は任意整理の対象から外すことで、住宅や自動車を手放すことなく借金の返済を行うことができます。

個人再生なら元本を減額できる

個人再生とは、再生計画に基いて借金を大幅に減額することができるものです。

任意整理とは違い裁判手続きを行う必要がありますが、借金が3,000万以下であれば通常1/5ほどに、3,000万円以上なら1/10まで借金を減らす
ことができます。

しかも、任意整理はあくまでも金利の引き直し計算による借金の減額でしたが、個人再生では元本と利息を合わせた総額から減らすことができます。

個人再生には2種類ある

個人再生には、小規模個人再生と給与所得者再生の2種類があります。

小規模個人再生は、「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがある」人であれば手続きが可能なため、自営業者やアルバイトの人などでも行うことができますが、再生計画の成立に債権者の過半数が反対しない(同様に負債額の過半数の債権者が反対しない)ことが条件となります。

それに対し給与所得者再生は、サラリーマンなど将来的に安定した収入を得られる人を対象にしており、債権者の同意を得る必要がありません。

ただし、給与所得者再生には可処分所得弁済要件が設けられ、返済総額が可処分所得(給与やボーナスなどの所得から税金や社会保険料、さらに最低限の生活費を差し引いた金額)の2年分以上の金額を債権者に支払うと定めています。

可処分所得は収入や家族構成、居住している地域によってはかなりの高額になることもあります。

住宅資金特別条項(住宅ローン特則)が利用できる

住宅資金特別条項とは、住宅ローンについてはこれまで通りの返済を続けることで、住宅を手放すことなく、その他の借金を個人再生にて減額することができる制度です。

個人再生に向いている人

多額の借金を抱えながらも、住宅など高額財産を所有したまま借金の返済を行いたいという場合は、任意整理よりも個人再生の方が向いています。

最終的には自己破産も

自己破産は、裁判所に自己破産の申し立てを行う債務整理です。

債務整理の中で、任意整理や個人再生は知らなくても、自己破産はなんとなく聞いたことがあるという人は多いのではないでしょうか。

自己破産になると、借金の返済義務がなくなります。

例え1億、10億の借金でも、自己破産が認められれば借金は0になります。

ただし、自己破産をすると、財産は破産管財人が現金に換えて債務者に配当するため、住宅などは処分されます。

自己破産にも2種類ある

自己破産には管財事件と同時廃止の2種類があり、破産手続きは財産を処分して債権者に配当する管財事件が基本となります。

同時廃止は、債務者に現金に換える財産がないことがあらかじめわかっている時に行われる手続きとなっています。

手持ちの現金がある場合だと、50万円以下は同時廃止となり財産として処分されませんが、50~99万円なら現金は処分されないものの管財事件となり、99万円以上であれば管財事件となります。

免責不許可事由がある

免責不許可事由とは、簡単に言うと借金の支払い義務を免除してもらえないということです。

例えば、借金を作った理由がギャンブルや浪費だった場合は、自己破産をしても借金が0にはなりません。

ただし、自己破産には裁量免責という制度があり、借金の理由がギャンブルや浪費であっても、裁判長の裁量によって免責、つまりは借金の返済義務がなくなることを言います。

自己破産の申し立てがギャンブルや浪費による借金だったとしても、それが1回目であれば結果的に自己破産が認められる可能性が高くなります。

自己破産に向いている人

借金の金額が多い場合や、無収入で返済能力がない人は、任意整理や個人再生ではいずれまた借金の返済が滞ってしまう可能性があるため、自己破産によって借金を0にした方が生活の再建をしやすいというメリットがあります。

また、生活保護を受けたい人も、借金があると申請が通らないため、自己破産をして借金をなくす必要があります。

まとめ

借金がある状態で対策をしないまま、相続になってしまうことを考えると心配になると思います。

借金に対する解消方法、軽くする方法が複数あることがわかっていただけたと思います。

債務がある人は、早めに手を打っておくといいと思います。