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人生100年時代と言われ定年退職後も仕事を続ける必要があります。
とはいえ、退職前と同様の給与で働くのは難しいのです。
今回は少しでも良い条件で働くためにすべきことを解説します。

誰もが65才まで働く時代がやってくる

現在、企業の多くは60才定年制を採用したまま、60才以降は本人の希望があった場合のみ雇用の延長を行っています。

これは、「高年齢者の雇用の安定等に関する法律」の改正により、2013年4月に改正法案が施行された段階から、3年ごとに年齢を1才ずつ増やしていく形(2013年は61才定年、2016年は62才定年・・)で、定年年齢の引き上げが行われているからです。

最終的に、2025年には65才までの定年延長が完全義務化されるため、65才までは会社勤めが可能となります。

とは言え、法律はあくまでも65才までの雇用延長を望む労働者に対し、企業側が雇用する義務を持つというもの。

60才で定年したいと言う希望が本人にある場合は、60才で定年退職する分には問題はありません。

しかし、そうなると心配になるのが収入の問題です。

年金の満額受給年齢は65才からとなっており、繰り上げ受給制度(※1)を利用しない場合は60才の退職後、5年間は無収入状態になります。

つまり、潤沢と言えるほどの老後資金の準備が整っている人以外は、少なくとも65才までは働かざるを得ない状況であると言えるでしょう。

(※1)繰り上げ受給制度を利用することで、65才になる前でも年金を受け取ることはできますが、仮に60才から受給を開始すると、本来の65才からの受給額に比べて3割ほど減額された年金額となります。

減額された年金額は一生そのままで、65才を過ぎたからと言って満額にはなりません。

「定年後は年金で悠々自適の暮らし」は昭和の話

さらに、年金受給となる65才と迎えたからと言って、安心するわけにはいきません。

日本の年金は賦課方式と言って、現役で働く世代が納める保険料を高齢者に支払っています。

1985年(昭和60年)には、高齢者一人を現役世代が6.6人で支えている計算でしたが、2002年(平成2年)では5.8人、2014年(平成26年)は2.2人となっています。

そして、2025年には僅か1.8人で高齢者一人を支えることとなるのが予想されています。

年金の納付額は、国民年金厚生年金ともに回復傾向にあるのに対し(平成28年の調査)、支給額は底からやや回復した程度。

今後は今よりも減ってしまうことが予想されています。

現在のところ、サラリーマンの夫(厚生年金)+専業主婦の妻(国民年金)の夫婦の場合、年金は月額にして19~21万円が平均と言われています。

高齢者無職世帯の月の支出の平均は25万円ほどのため、年金だけで暮らすには毎月4~6万円の赤字となってしまいます。

また、月の支出には住宅の補修、自動車の買い替え、旅行や趣味のお金などは含まれていないので、老後にゆとりのある生活を送りたいなら、年金を含め月35万円程度の収入があるのが望ましいと言われています。

定年後の収入源

定年後は年金だけで安定した生活を送るというのは、かなり厳しいと言えます。

多くの人の場合、貯金や退職金を生活費に充てながらの暮らしになると思いますが、それでは減る一方の通帳の残高に心もとなく感じるのではないでしょうか。

そのため、定年後は年金や貯蓄以外にも収入源を確保しておくことが大事になります。

個人年金や投資などもありますが、途中解約した場合に支払った額より少ない金額しか返金がなかったり、リスクを伴うなどデメリットをよく考慮した上で検討する必要があります。

では、定年後の収入源として、最も確実で手っ取り早いものは何なのか?

それは、仕事です。

定年後の働き方

せっかく定年で仕事から解放されると思っていたのに、とがっかりするかも知れませんが、老後に抱えるお金の不安は働くことで解消することができます。

では、定年後の働き方にはどのようなパターンがあるのでしょうか。

継続雇用は給料が減るのでモチベーションが下がる人も

「高年齢者の雇用の安定等に関する法律」によって、現在は65才定年制に向けた企業側の雇用見直しが行われています。

65才定年制の施行は2025年からですが、一足先に実施している企業もありますし、中には定年そのものを撤廃した企業もあります。

このような企業で働いている人は、継続雇用を希望することができます。

継続雇用には勤務延長と再雇用の2つがありますが、再雇用は一度会社を辞めることになるため退職金が支払われます。

なお、継続雇用にて同じ会社・同じ職場で働くことになったとしても、給料も同じであるとは限りません。

継続雇用で働き続けている人の給料は平均して以前の5~7割ほどとなっていて、仕事内容は変わりないのに給料が下がってしまい、モチベーションの維持が難しいと感じる場合も少なくないようです。

再就職は人脈が重要

特別な資格や卓越した知識を有している人なら、退職後にそのスキルを買われて別の企業に再就職することも可能です。

また、以前勤めていた会社の関連企業や、取引先などから声がかかることも少なくありません。

一から自分で開拓していく道もよいですが、このような時とても頼りになるのが人脈です。

働き手を探している会社としても、全く素性のわからない人よりも、ある程度能力なり性格なりを把握している人の方がずっと雇いやすくなりますよね。

ただし、このような人と人との関係は定年後になかなか築けるものではありません。

そのため、定年前から定年後を見据えた人との繋がりを考えておくことが大切でしょう。

また、仕事関係だけではなく、日ごろから友人・知人との関係を良好にしておくことで、思いもかけないところから声がかかる可能性が高くなります。

起業は借金しない範囲で

定年後も働くには、何も会社勤めしか方法がないわけではありません。

自分が個人事業主となる方法もあります。

しかし、資金を借金してまで起業するのはお勧めできません。

起業と言うと、オフィスを構えて従業員を雇い入れるイメージがありますが、定年後の企業は「一人ビジネス」がお勧め。

文字通り自分一人で全てを行うことになりますが、今の時代はパソコンがあれば世界中に繋がれますし、アドバイスを受けることも可能です。

定年後の働き方で大切なこと

定年後もバリバリ働いて、現役と同じくらいの収入を得たいと考える人は多いでしょう。

しかし、年金受給の対象者となると、このような働き方が損だと感じてしまうことがあります。

例えば、定年後の再就職でフルタイム勤務を希望し月収が29万円あるAさんと、少しのんびりしたいからとパートタイム勤務にして月収が20万円のBさんを比べてみましょう。

この時点では、AさんとBさんの収入には9万円もの差があります。

ところが、年金を貰いながら働く場合、収入が一定額を超えると年金は減額されます(※2)。

そして、カット額は当然ながら、多く収入を得ているAさんの方が高くなってしまいます。

また、定年後の再雇用の給与が定年前の75%に満たないケースでは、経過措置として「高年齢雇用継続給付金」が受け取れるのですが、こちらは収入が下がった人ほど多くなります。

つまり、Bさんの方がより多く給付金が受け取れることになります。

そうすると、9万円の差があったはずのAさんとBさんの収入は、僅か1~2万円の差にしかならなくなるのです。

(※2)年金の減額率については、再就職先での社会保険の加入の有無や、サラリーマン時代の老齢厚生年金の月額などによって変わります。

足りない分を補うという考え方

定年後も働くことが必須とは言え、何も現役時代と同じように働く必要はありません。

それは、上記でご紹介した「年金の減額」と「高年齢雇用継続給付金」以外にも、もう一つ大きな理由があるからです。

年金だけで暮らすと毎月4~6万円の赤字が出ると試算されていますが、これは逆に考えてみると、毎月4~6万円分働けば、赤字を補填できると言うことになります。

4~6万円の仕事なら、アルバイトやパートでも十分に得ることができます。

実際に、65才以上の7割が非正規雇用で働いていると言われています。

ゆとりある生活を送るには14~16万円ほど足りませんが、夫婦健在であれば奥さんも働くことで世帯収入は倍になるので可能になります。

定年後は仕事以外にも、趣味を始めとして自分の時間を持ちたいと希望する人は多いと思いますが、正規雇用にこだわらなければ、仕事と趣味の両方を得ることは可能と言えるでしょう。

【参考】厚生労働白書(厚生労働省)

高額収入や高待遇を期待しない

定年後の働き方で重要すべきなのは、生活を維持するための補助的な収入と生きがいです。

一流企業で役職に就いた後に退職を迎えると、そんな自分が再就職する先は収入や待遇がそれなりではなければいけないと考えてしまう人は少なくありません。

しかし、今の時代に高齢者に厚遇をしてくれる企業はほとんどないと言ってよいでしょう。

それよりも、定年後は第二の人生と言われるように、新人の時の気持ちに戻って一から学び直すくらいの姿勢の方が、人生をずっと豊かに楽しむことができます。

地域や人と繋がりを断つことなく、適度に収入を得られる上にやりがいが感じられる生き方は、サラリーマン時代には味わうことのなかった幸せの新しい形と言えるのではないでしょうか。

資格は事前に取得しておくとよい

定年後、新しい資格をとって再就職に生かしたいと考える人は多いと思いますが、実際には実務経験がなく資格だけ持っている高齢者を雇い入れる企業は少ないと言われています。

ハローワークでも、資格があるからと言って特に就職に有利になるわけではなさそうです。

それでも資格を得ておいた方が安心できるという人は、定年前から準備をしておくのがよいでしょう。

例えば、元々会社の労務に携わっていた人が「社会労務士」の資格をとった場合、再就職する際には実務経験と資格を兼ねているので、即戦力として欲しいと思う会社は多いでしょう。

同様に、銀行や保険、証券会社などの金融関係で働いていた人が、「ファイナンシャルプランナー」の資格をとって起業するケースもあります。

また、実務経験がなくても、定年後に人気の就職先としてマンションやビル管理があります。

その際、マンション管理士、建築物環境衛生管理技術者、電気主任技術者のような資格を持っていると、再就職に有利となることがあります。

まとめ

定年後に仕事を継続するには、いくつか方法があることがわかっていただけたと思います。

いずれの方法であっても定年退職をする前に、しっかりと準備をしておくことが重要です。

退職後の資金や年金など、なるべく早くに把握して、人生計画を立てておきましょう。