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熟年離婚という言葉を普通に聞くようになりました。
今回は熟年離婚の現状や離婚原因、対策についてまとめました。
離婚を考えている人は、一度立ち止まって、ぜひ参考にしてください。

他人事ではない熟年離婚

熟年離婚とは、長く連れ添った相手と婚姻関係を解消することを言います。

一般的に熟年は、壮年と老年の間である50才~70才くらいのことを称しますが、その年齢層にあたる夫婦が必ずしも熟年夫婦というわけではありません。

例えば、お互い45才で結婚した夫婦が、51才の時に離婚するケースの場合、これは熟年離婚には当たりません。

厚生労働省の人口動態調査によると、2017年の初婚の年齢は夫が31.1歳、妻が29.4歳となっています。

出典:2017年人口動態統計(確定)の概況(グラフは当サイトで作成)

「長く連れ添った」の解釈は人それぞれにあると思いますが、結婚から20年以上経っている場合をそう感じることが多いそう。

仮に平均年齢で結婚したとすると、結婚生活20年以上は50才以降の夫婦ということになります。

そういう意味では、熟年離婚は50代以降から増えてくると言ってよいでしょう。

この年齢になると、夫は定年退職を迎え、第二の人生を考え始める時ですが、「老後は妻とゆっくりと暮らしたい」と呑気に構えていると、気が付かないうちに熟年離婚の当事者となってしまうかも知れません。

熟年離婚の状況

離婚件数は平成14年(2002年)をピークに減少しています。

出典:平成30年我が国の人口動態(政府統計)(一部改変)

さらに、今後は結婚件数の減少から、離婚件数も同様に減っていくことが予想されています。

しかし、同居期間別にみた離婚の年次推移では、結婚期間5年未満を始めとして、5~10年、10~15年、15~20年は軒並み減少しているのに対し、20年以上の夫婦のみ離婚件数が増加しています。

つまり、離婚件数そのものは減っているにも関わらず、その中で熟年離婚だけは増えているのが現状なのです。

夫が定年退職した後の離婚原因

離婚の原因には夫婦間の価値観のズレや金銭トラブルなどが主としてありますが、そのような一般的な原因とは違う、熟年離婚ならではの原因があります。

退職後の離婚原因

  1. 夫が退職した後の妻のストレス
  2. 長年の不満の蓄積
  3. 子どもの自立
  4. 退職後の夫婦仲の問題
  5. 熟年離婚が世の中に浸透した

もちろん、こういった理由で法的に離婚ができるというわけではありませんが、心理的に大きな要因となります。

1. 夫が退職した後の妻のストレス

夫が仕事で日中家にいなかった時は、妻には自由になる時間があり、ストレスを感じていたとしても解消することができていました。

しかし、夫の退職後は四六時中一緒に過ごすことになり、ストレス解消の機会を失ってしまいます。

さらに、夫が常時家にいるようになると、夫の分の昼食の用意が必要になったり、友達と出かけるのにも一々承諾をとらなくてはいけないなど面倒に思うことが増え、むしろストレスを抱えやすくなるのです。

そのため、妻の方が離婚を考えるケースが増えると言われています。

なお、夫の退職後に妻が原因不明の体調不良に悩まされる場合、その原因の一つに常時夫と過ごすことによるストレスが関係していることがわかっており、そのような症状を「夫源病」と呼んでいます。

2. 長年の不満の蓄積

“男は外で働き、女は家を守るもの”という価値観によって、長い間、家事や育児は妻がして当然という夫の態度に不満を抱いていることも、熟年離婚に至る大きな原因と言えます。

ただし、夫が仕事をしているうちは、それもやむを得ないと不満を胸にしまっていることが多いでしょう。

しかし、退職後は話が変わります。

妻からすると、仕事を辞めた後は家事を分担してくれるものだと思っていたのに、相変わらず「お茶」「飯」などと命令され、一向に家事をする気がないとしたら、「この先ずっとこうして虐げられるのは御免だ」と思ってしまうのは当たり前のことです。

3. 子どもの自立が切っ掛けに

熟年離婚をする夫婦を端から見ると、「長く一緒にいたのに、どうして今さら別れを考えるのか」と疑問に思うことも多いと言います。

しかし、熟年離婚をする夫婦の中には、敢えてそのタイミングを狙っていた場合も多くあります。

結婚期間が20年を超えてくると、子どもは自立していることが多いでしょう。

子どもが小さい時は離婚を考えても、「淋しい思いをさせるのでは」と踏み止まる場合が多いものですが、子どもが自立していればそれがネックになることはありません。

4. 退職後の夫婦仲の問題

子どもがいなくなり、夫が退職して夫婦で過ごす時間が増えると、お互いの関係性が浮き彫りになってきます。

これまでは、顔を合わせずに何となく過ごせてきたものの、夫婦でいると毎日を楽しく過ごせなくなり、苦痛になってくる人が増えているといいます。

これは妻に限ったことではなく、夫の方もそのように感じる人が多くいるのです。

ちょっとしたことで、自分のお互いの存在価値を認め合えなくなると、そうした意識が芽生えてしまい、離婚へと進むケースがあります。

今後の限られた人生を、有意義なものとするために離婚をしたいと考えるのです。

5. 熟年離婚という言葉が世間に浸透

それまでは離婚をしたくても、50才を過ぎて離婚をするケースが多くなかったために実行に移せなかった人も多かったようですが、1990年代後半頃から熟年離婚という言葉が聞こえ始め、2005年にドラマのタイトルとなったことで一気に知名度が増しました。

これにより、熟年離婚に対するハードルが下がったことが、近年に熟年離婚が増加した一つの要因と言われています。

安易な熟年離婚は避けるべき

熟年離婚には、長い間虐げられてきた自分の人生をやり直す大きなチャンス、のような意味合いを感じる人も多いでしょう。

実際に、離婚して幸せに人生を再スタートしている人もたくさんいます。

しかしその一方で、誰にでも「熟年離婚をすれば楽しい毎日が待っている」わけではありません。

中でも、お金に関する問題は深刻です。

離婚してみて始めて「こんなはずじゃなかった」と後悔してみても、その時にはどうすることもできなくなってしまいます。

年金分割の誤解

2007年の法改正により、それまで専業主婦は国民年金分しか年金を受け取れなかったのが、例え年金支給の前に夫婦が離婚しても、年金分割の制度によって婚姻関係(つまり結婚していた期間)に夫が支払っていた厚生年金も分配の対象となりました。

これにより、国民年金だけでは到底暮らしていけないと離婚に二の足を踏んでいた妻も、熟年離婚を申し出るようになったのです。

しかし、年金分割はあくまでも夫と結婚していた期間の厚生年金分になります。

そのため、仮に35~50才までの15年間の結婚生活であれば、その期間の厚生年金分しか対象ではありません。

夫が独身時代に払った分や、離婚後に払った分は対象外になります。

さらに、婚姻期間中の厚生年金も、必ずしも半分が分配されるとは限りません。

このように、年金分割制度を誤解して離婚をすると、実際に支給される年金が思いの他少なく生活に困ってしまうことになります。

財産分与の難しさ

熟年離婚では、離婚年齢の高さから、財産分与がそれなりに高額になることが予測されます。

そこを踏まえた上で離婚を考える人も少なくないでしょう。

しかし、不動産は結婚後に購入したものが分与の対象となるため、親から譲り受けた家の場合は分与の対象にはなりません。

また、預貯金についても、基本的には結婚後に夫婦で積み立てたものが分与の対象となります。

親の遺産を相続している場合や、独身時代に貯めたものは分与の対象になりません。

さらに、退職金は財産分与の中でも金額が大きくなりやすいですが、退職前の離婚では、離婚から退職まで10年以上ある場合には退職金が財産分与の対象から外れてしまうケースが多くなります。

例え離婚と退職の時期が近かったとしても、退職金を分割で受け取る方法だと総額の半分を受け取ることは難しくなってしまいます。

また、退職後に離婚をした場合でも、妻が受け取れるのは結婚している期間に相当する分になります。

夫の勤続期間が40年で、30歳で結婚した場合、2500万円の退職金を分割すると、妻は937.5万円、夫は1562.5万円になります。

この他に、夫婦で管理していた口座とは別に口座を隠し持っている、内緒で株式投資を行って得た利益などに関しては把握しにくい面があり、すべての財産を均等に分与するというのは現実としてかなり難しいと言わざるを得ません。

もちろん、これは妻側ばかりが不利ということではなく、財産分与によって夫側も老後の資金不足に陥ってしまう危険性があり、双方にとってリスクが大きいことであるという認識が必要となります。

熟年離婚後の再就職は厳しい

夫と離婚後、働いて生活費を稼ぐことができれば、例え年金分割や財産分与が少なくても何とかなると思うかも知れません。

しかし、50才を過ぎてからの再就職で、収入や仕事の内容面で希望に叶うような会社勤められることは稀です。

多くはパートやアルバイト、契約社員などの非正規雇用に留まります。

そのため、生活はギリギリになってしまい、夢に描いていたような自由な暮らしはできなくなってしまうでしょう。

熟年離婚を計画している場合は、再就職に有利な資格をとっておくとか、フルに働かなくても十分生活できるだけの資金を作っておくなどの綿密な計画が重要になります。

これは夫も妻も同様で、婚姻を継続することと比較すると、離婚した方が経済的には苦しくなります。

熟年離婚を避けるにはどうしたらよいのか

近年は夫からの離婚の申し出が増えていると言われていますが、それでも圧倒的に多いのは妻からの申し出によるものです。

お互いに性格があわず、思いやりがもてないなど、根本的な要因がないのであれば、小さなことから生活を変えていくことで、夫婦仲は良くなるはずです。

特に退職後は夫の家での生活が大きな要因となりますので、その点は十分に注意した方がいいでしょう。

妻の抱えている不満を解消することができれば、離婚回避に繋がるというわけです。

夫婦が自由になれる時間を作る

退職後、特にこれといった趣味もなく、ボランティアなどにも興味がないとなると、家に引きこもってしまいがちになりますよね。

これでは妻は家で寛げる時間がなくなってしまい、ストレスが溜まってしまいます。

このような状況を避けるには、退職後は地域のコミュニティーに積極的に参加をしたり、アルバイトなどの仕事を始めてみるのがよいでしょう。

一日の中で夫が家を空ける時間があると、その間夫婦に適度な距離が生まれストレスを感じることが少なくなります。

自分に自由な時間を作ることで、妻にも自由な時間を作ってあげるのです。

双方が拘束されることなく、自由な時間を持てれば、一緒にいる時間もより楽しい時間に変わってきます。

家事を分担する

家事は本来、その家に暮らす人が当たり前に行うものです。

仕事をしている時は、家を不在にしがちな自分に代わって、妻が一手に引き受けてくれていただけのこと。

そのため、退職後は意識を改めて家事を行う必要があります。

家事は想像以上に数が多く、大変です。

感謝の気持ちを持ちながら家事に参加することで、妻の不満の大部分は解消されると言ってよいでしょう。

まとめ

夫が退職した後には、まだまだ長い時間が残されています。

パートナーと長く、楽しい時間を過ごすためには、お互いで尊重しあい、信頼できる関係を構築していくことが大切です。

熟年離婚では、離婚後のライフプランがかなり厳しいものとなってきます。

熟年離婚を考える前に、現在の自分たちを見直すことが大切だと思います。