平成31年度税制改正大綱が公表されました。
消費税の増税を踏まえて、どのような税制になるのかポイントをまとめてみました。
税制改正大綱とは
税制改正大綱とは、翌年度の税制改正について政府・与党がまとめたものです。
税制改正までの流れは概ね以下のようになります。
税制改正までの流れ
- 国の各省庁や経団連などの団体からの税制改正要望が出る
- 政府の税制調査会で改正内容を議論
- 与党の税制調査会で改正内容を議論
- 与党が税制改正大綱を発表
- 政府税制改正大綱を閣議決定
- 1月からの通常国会で税制改正の法案が提出・審議される。
- 3月に税制改正法案が成立
- 4月から新しい法律が施行される。
平成31年度税制改正の内容とは
平成31年度は10月に消費税率の引き上げが予定されています。
今回の大綱には「消費税の引き上げを予定どおり実施し、経済へ影響を与えないように万全を期す」と記載されています。
中でも、消費税率の引き上げに伴う大きな改正は、以下の3つになります。
- 住宅ローン控除の拡充
- 自動車にかかる税金の見直し
- 消費税率の軽減税率の実施
また、そのほかに私たちの生活に直接関係しそうなのが、以下のものです。
- ふるさと納税制度の見直し
- 相続税・贈与税の見直し
以下に一つずつ説明していきます。
消費税引上げに伴う税制改正の内容
住宅ローン控除の拡充
消費税率10%で家を購入して、平成31年10月1日から平成32年12月31日までの間に、その家に住み始めた場合に以下のような特例を受けられることになります。
- 住宅ローン控除の適用を3年延長して13年間適用を受けられるようにする。
- ただし、延長の3年間では家の購入金額の2%相当額が控除額の限度になる。
消費税率が2%増える分は住宅ローン控除で戻ってくるというわけです。
したがって、住宅ローンをしない人やローンを10年で終わらせようと思っている人にとっては、消費増税前に購入した方がいいかもしれません。
自動車にかかる税金の見直し
自動車にかかる税金については以前から抜本的な見直しが必要とされ、これまで国では多くの検討を重ねてきました。
また、経済界などからも「購入時に自動車取得税と消費税がかかるのは二重課税ではないか。」などの意見もあり、改革が迫られていたのです。
今回の税制改正では最終的な形として、車体関連の税金が示されました。
主な内容は以下になります。
今後の車体課税
- 自動車税の減税
- 自動車取得税の廃止
- 環境性能割の導入
- グリーン化税制の改正
自動車関連の税制改正については以下の記事でまとめていますので、参考にしてください。
消費税率の軽減税率の実施
消費税率が10%に引き上げることが決まった時から、一部の生活用品などは税率が8%に据え置かれることになっていたものです。
ただし、食品の外食と持ち帰りで10%と8%で区分される場合の境界線など、Q&Aが記載されるなどしましたが、それでも明確な区分については疑問が残るような状態もあります。
今後も具体的な事例を追加したりしながら、検討を続けていくとされました。
ふるさと納税制度の見直し
ふるさと納税はかなり浸透した制度となりましたが、返礼品が豪華になりすぎたことから、総務省は制度の見直しを検討してきました。
ふるさと納税を簡単にいうと以下のような制度です。
ふるさと納税のポイント
- 地方自治体に寄付する(住民税の約2割程度が限度額)
- その自治体から返礼品が送られてくる
- 寄付額から2000円を差し引いた額は翌年度の所得税や住民税で戻る
つまり、1年間に2000円の負担で様々な返礼品を受け取ることができるのです。
寄付を受ける地方自治体からすると、多くの寄付を受けられるように高額の返礼品を出すようになり、ふるさと納税という制度を利用した、ショッピングのようになっているのです。
こうしたふるさと納税の実態は制度の趣旨に合わないとして、高額の返礼品を出している自治体を注意してきたのですが、結局おさまらないことから、税制改正することになったようです。
ふるさと納税の主な改正ポイント
- 総務大臣がふるさと納税の対象となる地方自治体を指定する。
- 指定されるには、返礼割合3割以下、地場産品などのルールに適合していることが必要
現行では、総務大臣の指定と関係なく、すべての地方自治体に対してふるさと納税をできるのですが、今後は総務大臣の指定が必要になるようです。
指定には、ふるさと納税に対する返礼品に基準を設けるとのことです。
この改正は2019年6月1日からということですので、いまのうちにふるさと納税をしておくと、高価な返礼品をもらえるかもしれませんね。
相続税・贈与税の見直し
相続税や贈与税についても、様々な分野で一定の見直しがされるのですが、中でも個人に関係のあるのが、以下の2つです。
- 「教育資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税措置」の見直し
- 「結婚・子育て資金の一括像容非課税措置」の見直し
それぞれ、ポイントを説明します。
「教育資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税措置」の見直し
平成25年度の税制改正で導入された制度ですが、利用者が増加していないことや、一部の富裕層が利用しているなどの状況があるようで、今回の改正に至ったようです。
ちなみに、教育、結婚・子育て資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税措置とは、父母や祖父母が30歳以下の子や孫の教育資金として1500万円までを贈与した場合に贈与税が非課税となる制度です。
その制度が以下のように改正されます。
改正のポイント
- 受贈者に所得制限ができる
- 受贈者が23歳以上だとお金の用途に制限がかかる
- 贈与者が死亡した場合の取扱いを変更
- 未使用の贈与額に関する贈与税の非課税
一つずつ簡単に説明していきます。
受贈者に所得制限ができる
これまでは贈与される人の所得には制限がなかったのですが、今回の改正によって1000万円以上の所得がある人には贈与税は適用されないこととなります。
2019年4月1日以降の贈与から適用されます。
受贈者が23歳以上だとお金の用途に制限がかかる
もともとこの制度は、資金の使い道が決まっていて、主なものは以下の内容になります。
- 入学金、授業料、入学試験の検定料
- 学用品、修学旅行、給食費
- 学校以外の費用で妥当なもの(塾など)
- スポーツまたは文化芸術に関する活動など
このうち、4番目の「スポーツまたは文化芸術に関する活動」にかかる費用や、これらのための物品の購入費などについては、今回の改正により、贈与者が23歳以上の場合は対象外になります。
2019年7月1日以降の贈与から適用されます。
贈与者が死亡した場合の取扱いを変更
贈与をした人が死亡したときに、贈与を受けた金額のうち使っていない金額がある場合、これまでは非課税限度額の1500万円までは贈与税は課税されませんでした。
今回の改正では、死亡者から相続したものとして扱うことになりました。ただし、贈与された人が以下の場合は従前通りとなります。
- 23歳未満
- 在学中
- 教育訓練給付金の対象となる教育訓練を受講している場合
2019年4月1日以降に贈与した人が死亡した場合に適用されます。
未使用の贈与額に関する贈与税の非課税
これまでは贈与を受ける人が30歳になったときに、贈与額のうち使っていない金額がある場合は、その金額には贈与税が課税されていました。
今回の改正では、贈与を受ける人が在学中であったり、教育訓練給付金の対象となる教育訓練を受講している場合は、その時点では贈与税は課税されず、教育が終了するか40歳になった時点で未使用の金額があるときに課税されることになりました。
2019年7月1日以降に適用されます。
「結婚・子育て資金の一括像容非課税措置」の見直し
平成27年度税制改正によって作られた制度ですが、こちらも制度の利用状況などから内容を検討して、今回の改正に至ったようです。
この制度は、20歳から49歳までの人が父母や祖父母(直系尊属)から、結婚や子育てのために贈与を受けた場合に1000万円まで非課税になる制度です。
これまでは、贈与を受ける人の所得に制限はありませんでしたが、教育資金の贈与と同様に贈与を受ける人の所得が1000万円を超える場合には、適用されないこととなります。
この改正は2019年4月1日以降の贈与から適用されます。
まとめ
平成31年は消費税の引き上げを伴うため、できるだけ経済活動に影響がないようにと様々な改正が用意されました。
また、ふるさと納税についてはかなり厳しくなりそうですので、私たち一般市民としては今年中にやってしまうとお得かもしれませんね。