サラリーマンが老後の資金を考える上でもっとも重要なのが厚生年金です。
ここでは、厚生年金の概要を説明するとともに確定拠出年金の必要性などを解説します。
厚生年金は公的年金の一部
厚生年金は公的年金の一つで、公的年金制度の二階建て部分に位置します。(公的年金の上に企業年金や確定拠出年金などが3階として乗ってきます。)
公的年金には、国民年金、厚生年金、共済年金の3種類があります。
ただし、共済年金は平成27年10月1日以降に受給する人は厚生年金からの受給となりますので、現状においては実質的には国民年金と厚生年金の2つということになります。
厚生年金に加入しているのはサラリーマンや公務員で、国民年金部分と厚生年金部分を受給できる仕組みになっています。
公的年金は国が制度を運営し、加入は義務となっています。一定期間の保険料を納付することで受給する権利を得られます。
なお、年金保険料の支払いは通常は給与天引きとなり、保険料は給与の金額によって決まります。
厚生年金と厚生年金基金は違う
厚生年金基金についても少し説明します。
厚生年金基金は企業年金制度の一つで、国が行う厚生年金の管理や運用、支払いを代わりに行う機関です。
基金が運用して得た利益を通常の厚生年金にプラスして支払うことができるので、厚生年金単体よりも多くの金額を年金として受けとることができるのです。
しかし、厚生年金基金や同じく企業年金である確定給付企業年金の原資の運用はうまくいっていないため、2014年には厚生年金基金を原則廃止とする法令が施行されました。
厚生年金の保険料と受給額
厚生年金保険料は標準報酬によって決まる
厚生年金の保険料は標準報酬月額と標準賞与額に保険料率を掛けて算出されます。
標準報酬月額とは大まかに毎月の給料、標準賞与額はボーナスと考えてください。
その金額に一定の料率を乗じることで厚生年金の保険料が決まるということです。
そして、拠出方法は労使折半で、会社と労働者がそれぞれ保険料を負担する仕組みとなります。
平成29年9月からの厚生年金保険料率は全額で18.3%、折半では9.15%となります。(参照:保険料額表(日本年金機構))
なお、保険料率は平成16年から少しずつ引き上げられてきましたが、引き上げは終了となり、今後は18.3%で固定となります。
厚生年金の受給額は現役時代の年収や加入期間などで決まる
厚生年金の受給額は少し複雑ですので、年金お知らせ便などで確認するといいでしょう。
なお、厚生年金の受給額の平均は15万円程度となっています。
確定拠出年金と厚生年金では年金制度における位置づけが異なる
厚生年金 | 確定拠出年金 | |
---|---|---|
加入者 | 会社員・公務員 | 個人型・企業型※を導入会社の会社員 |
月々の拠出額 | 標準報酬月額により決定 |
拠出限度額※ 企業型:27,500円から55,000円/月 個人型:23,000円から68,000円/月 |
給付額 | 報酬比例 | 運用成果による |
確定拠出年金と厚生年金では、年金制度における、そもそもの位置づけが異なります。
上述したように、厚生年金が公的年金で年金制度の二階部分に位置することに対し、確定拠出年金は私的年金です。公的年金制度の上に乗るようなイメージになります。
確定拠出年金の加入対象範囲は幅広い
ここからは厚生年金と確定拠出年金における具体的な相違点について、確認していきましょう。
加入対象者の違いについて
厚生年金は公的年金であり、サラリーマンなどは加入が義務付けられています。
一方で確定拠出年金は企業で確定拠出年金制度を導入している場合は、基本的に加入することになりますが、そうでない場合は個人の判断で自ら手続きをして加入することになります。
また、個人型確定拠出年金の加入対象は広く、自営業者やサラリーマンだけでなく公務員なども加入することができます。
拠出限度額の違い
月々の拠出限度額にも両者間で相違点が存在します。
基本的に、厚生年金では報酬が多い程、月々の拠出額が多くなります。
これは法令で定められていますので、給与天引きによって自動的に支払われます。
一方で、確定拠出年金では、企業型、個人型それぞれで拠出限度額が定められているものの、比較的、運用時の自由度は高いと言えます。
特に、個人型確定拠出年金は運用は個人しだいになります。
給付額の違いについて
さらに、将来の給付額についても相違点が存在します。
厚生年金の給付額は、支払った額、つまり給与などによって異なります。
一方で、確定拠出年金は運用時のポートフォリオとその投資成果に左右されます。
また、厚生年金は保険料として支払った金額を貯蓄するというものではないので、支払った額が戻ってくるというものではありません。
現状においては基本的には支払った額よりも受給する額の方が少なくなります。
その点、確定拠出年金は運用に左右されるものの、積み立てた金額は返ってきますので大きな違いと言えるでしょう。
第1号被保険者は老後資金準備の自助努力が必要
サラリーマンなら厚生年金に加入出できますが、自営業者等の第1号被保険者は厚生年金に加入することができません。
つまり、将来の年金給付は年金制度の一階部分のみとなり、国民年金に限定される訳です。
もちろん、任意にはなりますが、第1号被保険者は老後資金準備における自助努力が必要と言えるでしょう。
個人型確定拠出年金へ加入することで積立時の所得控除等、様々な税優遇措置も受けられます。
将来の資金準備手段として、有効活用すべきと言えるでしょう。
まとめ
厚生年金と確定拠出年金では、根本的に制度が大きく異なります。
公的年金である厚生年金は国から給付されることが決まっていますが、基本的に支払った金額よりも多くの額を受給できる可能性は少なくなります。
また、現役時の報酬額によって、厚生年金の給付額は大きく異なりますので、確定拠出年金に加入するなどで、老後資金準備に向けた自助努力をすることが必要です。
将来の給付額や年金制度を正しく理解し、適切な資金準備を行うことが重要と言えるのです。