配当や株の節税については、これまでも方法がありましたが、平成29年から新しい方法ができたんです!法律が改正されましたので、その方法をしっかりとレクチャーします。
いくらくらい節税できるの?
節税できるのは上場株式の売買の利益と配当所得です。
特に今年は株で損失を出してしまったという人は、申告をすることで高い節税効果を得られる可能性があります。
自分が株や配当所得の税金をどのように納めているか確認
配当所得や株の譲渡益には複数の申告方法があります。
まずは、その方法についてポイントを理解してください。その上で自分がどの方法で納めているのかを確認してください。
配当所得や株の売買による利益の申告方法
株の売買益と配当所得の納税・申告方法は以下のとおりです。
株の売買益・譲渡益
- 証券口座から源泉徴収
- 確定申告(申告分離)
配当所得
- 証券口座から源泉徴収
- 確定申告(申告分離)
- 確定申告(総合課税)
株は2種類、配当所得には3種類の方法があります。
1と2は同じ方法です。
多くの人は、株も配当も税金は証券口座から源泉徴収されていると思います。
証券口座から源泉徴収されるためには、口座を開設する際に「特定口座で源泉徴収」されるものを選択しているはずです。
自分の証券口座から源泉徴収されているかは、HPなどで株の約定情報や配当の受け取りの明細などをご覧ください。
その明細に税金が源泉徴収されている記載があれば、特定口座から源泉徴収されていることになります。
この場合、所得税15%、住民税5%の合わせて20%が徴収されています。(復興特別所得税を含めると、20.315%になりますが、ここでは20%として話を進めて行きます。)
今回の節税はこの源泉徴収されている人が対象になります。
ただし、毎年確定申告をしている人でも、節税になる場合がありますので、最後まで目を通してください。
住民税については注意が必要!
具体的な節税方法を説明する前に、もっとも重要なことを説明しておきます。
それは、住民税についてです。
このこと理解していないと、節税したつもりが、逆に支出の方が増えてしまったということになりかねないのです。
確定申告すると所得が増える
株や配当の所得が源泉徴収されている人は、その所得については、住民税の所得として換算されていません。
役所で所得証明書などを取るとわかるのですが、株や配当所得の記載はありません。
しかし、確定申告をすると、その内容は市町村へデータ送信されて、その内容に基づいて住民税の計算が行われますので、株や配当所得も所得として認識されます。
所得税も住民税も源泉徴収した分は戻ってきて、新たに計算されるので、所得税と住民税については、何も問題ないのですが、配偶者の扶養控除や国民健康保険などで困ることがあります。
国民健康保険料や夫の所得税などが増える可能性がある
例えば、配当で100万円もらった場合、その人の給与収入にもよりますが、確定申告をすることで、数万円程度の節税が見込めます。
しかし、この100万円が所得換算されることで、国民健康保険に加入している人は年間で10万円程度高くなってしまうことがあります。(国民健康保険料は市町村によって異なります。)
また、専業主婦でこれまでは、所得税や住民税で夫の配偶者控除に入っていた場合、100万円の所得があると配偶者控除の適用がなくなりますので、7万円程度の税金が増える可能性があります。
その他にも、住民税の所得が増えることによって、低所得者の恩恵が受けられなくなる可能性があります。
つまり、数万円の節税はできたけれど、他の出費が大きくなる可能性があるのです。
住民税だけ申告しないということができる
上記のような事態を防ぐには、所得税と住民税の申告内容を別にするという方法があります。
つまり、確定申告はするけれど、それは所得税のみに有効なものとして、住民税は別に申告するということです。
これは平成29年度から設けられた制度です。
例えば、配当所得を所得税だけに適用します。
こうすることで、所得税は節税になり、住民税の所得には換算されないため、国民健康保険料が増える問題もクリアされます。
そして、扶養については所得税は控除されませんが、住民税では控除されます。
住民税の申告をどうするかは悩ましい
住民税の申告をするかしないか、これは節税できる金額によってきます。
どちらが得することになるのか、よく考えてから行動した方がいいですね。
考慮すべき点は・・
- 税金や健康保険の扶養がどのように変化するか
- 国民健康保険に加入している人は特に注意が必要
ということです。
どういう申告をしたら得になるのか、具体的には役所の職員と相談するといいと思います。
税務署では健康保険などのことを詳しく知らないので、個別の相談は住民税担当課の職員にした方がよいでしょう。
それでは、次から具体的な節税の方法を説明していきます。
証券口座が一つで株や配当所得がある人の節税方法
まずは、証券口座が一つの人の節税方法を説明します。
上記のとおり、証券口座からは株式の売買益や配当所得に対して、20%が源泉徴収されます。
利益 | 税金(20%) | |
---|---|---|
株の売買 | 40万円 | 8万円 |
配当 | 100万円 | 20万円 |
ただし、株の取引でマイナスになってしまった場合はどうでしょうか。
利益 | 税金(20%) | |
---|---|---|
株の売買 | −50万円 | 0円 |
配当 | 100万円 | 20万円 |
このように、株はマイナスですので、源泉徴収は0円、配当だけが源泉徴収されます。
確定申告すると配当と株のマイナスが相殺できる
上記のように株でマイナスになってしまった場合は、確定申告をすることで配当所得からマイナス分を差し引くことができます。
配当100万円 − 株50万円 = 50万円
となりますので、この倍50万円に対して税金がかかることになります。
つまり、50万円の20%分の10万円が税金となります。
この場合は、源泉徴収されていた20万円が、確定申告をすることで10万円になったわけです。
これは、確定申告で申告分離課税(税率は源泉徴収と同じ)を選んだ場合になります。
特定口座を複数持っている人の節税方法
証券口座が一つであれば、株の売買でのプラスとマイナスは、その口座の中で相殺してくれるのですが、複数の口座があり、それぞれでプラスやマイナスがある場合はそうはいきません。
例えば、以下の表をみてください。
A証券口座 | B証券口座 | |
---|---|---|
損益 | 70万円 | -40万円 |
税金(20%) | 14万円 | 0円 |
A証券ではトータルで70万円の利益が出ていますので、そこから20%の14万円が源泉徴収されます。
そして、B証券ではトータルが-40万円となりましたので、源泉徴収はされません。
何もしないとこれで終わりです。14万円の税金を払ったことになります。
しかし、確定申告をすれば、A証券とB証券の利益を合算できますので、
利益は・・・70万円(A証券) − 40万円(B証券)= 30万円
となりますので、30万円に対して税金がかかります。
30万円 × 20% = 6万円
となりますので、元の14万円と比較すると8万円の節税になりました。
配当所得の節税
配当所得の節税方法は、上記の株のマイナス分を差し引くという方法以外にもあります。
例えば、株は持っているけど、配当や優待が目的で、売買はしないという人もいるでしょう。
この場合、通常であれば上記のとおり、20%の税率で源泉徴収されます。
配当の場合は、確定申告の方法が2通りあります。
- 申告分離
- 総合課税
申告分離は、株のマイナスと相殺できるもので、すでに説明した方式です。
ここでは、総合課税について説明していきます。
総合課税とは、給与や事業所得などと一緒に課税される方式で、給与や事業所得に配当所得も合計して計算していきます。
配当所得を総合課税にすると配当控除が受けられる
配当所得には配当控除という制度があります。
これは総合課税にのみ適用される制度で、所得が1000万円以下の場合は10%(住民税3%)、1000万円を超える部分については5%(住民税1.4%)が控除されます。
配当所得は住民税の税率がちがう
配当控除の総合課税の申告は源泉徴収と比較して、税率が異なります。
源泉徴収・確定申告(申告分離)
- 所得税:15%
- 住民税:5%
確定申告(総合課税)
- 所得税:5%〜45%
- 住民税10%
所得税は所得によって税率がかわりますので、もともとの所得が少ない人は源泉徴収の15%から5%に下がることになります。
一方で、住民税は5%から10%に増えてしまいます。
冒頭でも説明しましたが、こういったことからも住民税だけは配当所得の申告をしないという方法をとることができるのです。
こうすることで、住民税がさらに少なくなります。
計算例で確認しましょう
ここでは、以下の例で説明していきます。なお、計算を簡単にするため、所得控除の中身などについては言及しませんし、住民税の計算も均等割は加味せず、税率を使用する所得割のみを考慮しています。
できるだけ簡単に記載していますので、理解してみてください。
まず、計算に使う所得などはこちらになります。
- 給与所得550万円
- 配当所得50万円
- 所得控除300万円
所得税の税率は以下の表を使用しています。
課税所得 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円〜330万円 | 10% | 97,500円 |
330万円〜695万円 | 20% | 427,500円 |
695万円〜900万円 | 23% | 636,000円 |
900万円〜1,800万円 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円〜4,000万円 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
配当所得を申告しない場合
給与所得500万円 − 所得控除300万円 = 課税所得200万円
- 所得税:102,500円
(200万円×税率10%−97,500円) - 住民税:200,000円
(200万円×税率10%) - 配当の源泉徴収税額:100,000円
(50万円×20%) - 合計:402,500円
配当所得を申告した場合(所得税のみ申告)
所得550万円(給与+配当)−所得控除300万円=課税所得250万円
- 所得税:102,500円
(250万円 × 税率10% − 97,500円 − 5万円(配当控除)) - 住民税:200,000円
(200万円 × 税率10%) - 配当の源泉徴収税額(住民税のみ):25,000円
(50万円 × 5%) - 合計:327,500円
申告することで、402,500円から327,500円を差し引いた、75,000円が節税できました。
配当所得を申告すると損する例
所得が大きくなると、申告すると税額が増えてしまうケースがあります。
- 給与所得1200万円
- 配当50万円
- 所得控除200万円
配当所得を申告しない場合
給与所得1200万円 − 所得控除200万円 = 課税所得1000万円
- 所得税:1,664,000円
(1000万円×税率33%−1,536,000円) - 住民税:1,000,000円
(1000万円×税率10%) - 配当の源泉徴収税額:100,000円
(50万円×20%) - 合計:2,764,000円
配当所得を申告した場合(所得税のみ申告)
所得1250万円(給与+配当)−所得控除200万円=課税所得1050万円
- 所得税:1,879,000円
(1050万円×税率33%−1,536,000円−25,000円(配当控除)) - 住民税:1,000,000円
(1000万円×税率10%) - 配当の源泉徴収税額(住民税のみ):25,000円
(50万円×5%) - 合計:2,904,000円
※所得が1000万円を超えているので配当所得が小さくなります。
この場合は、申告すると2,904,000円、申告しないと2,764,000円となりますので、申告することで14万円ほど税額が増えてしまいます。
配当所得の申告は低所得者ほど得する制度
所得税の税率は所得が多いほど、大きくなっていきます。
したがって、給与所得が大きい人は申告するよりも、一律20%の税率で徴収された方が得することになります。
逆に所得が少ない人は確定申告した方が得になります。
ただし、前段で記載したとおり、申告すると住民税の所得に換算されてしまいますので、扶養から外れたりして、逆に支払い額が増えないように気をつけてください。
株や配当の税率が少ないのは高所得者に優遇している?
株や配当の税率は源泉徴収で20%となっています。
一方で、所得税の一番小さい税率は5%、住民税は一律で10%。合計で15%になります。
所得が少ない人は源泉徴収税率の方が大きいわけです。
所得が大きい人については、所得税の税率は45%が最高です。
ただし、株や配当は20%でいいのです。
例えば、株をとても多く保有していて、配当所得が1億円以上ある資産家の場合でも、税率は20%となります。
しかも、住民税における所得は、他の所得がなければ、非課税の扱いとなります。
住民税が非課税の場合、様々な恩恵を受けることができます。
この辺の仕組みは何となく釈然としない感じがありますね。
税制調査会でも議論になっているみたいですから、今後、改正があるかもしれません。
まとめ
株の譲渡所得や配当所得について、その節税の仕方を見てきました。
証券口座で源泉徴収されているから問題ないと思っている人も多いと思いますが、一度、自分の税金を確認してみるといいと思います。
よくわからない人は、お住いの市町村の住民税担当課で相談することをおすすめします。