消費税の増税が迫っていますが、今回は増税後にポイント還元などの施策が実施されるため、増税前に何を買っておけばいいのか迷う人もいるでしょう。
今回は消費税増税と一緒に実施される制度とともに、増税前に買うべきものについて解説します。
消費税増税の前に買って損なものもある
2019年10月に消費税が8%から10%に引き上げられます。
2014年に消費税が5%から8%に引き上げられたときには、多くの人が増税前に日用品や車、食料、家電などを増税前に購入したため、増税後には国民全体の消費が落ち込み、景気が悪くなりました。
こうした経緯があり、今回は前回のような景気の落ち込みがないよう、国は様々な政策の実施します。
住宅や自動車など、消費税の影響が大きい高額なものだけでなく、食料品や日用品に到るまで、消費意欲が減少することのないように考慮されています。
消費税10%に合わせて実施されるもの
- 軽減税率(飲食料品・新聞)
- 住宅購入関連の対策
- 自動車購入関連の対策
- プレミアム商品券の発行
- キャッシュレス決済によるポイント還元
したがって、今回は消費税が増税されるからといって、何でもかんでも増税前に買っておけばいいということではないのです。
また、経過措置といって、消費税が10%になってから物やサービスの提供を受けるものであっても、契約の時期などによって消費税8%が適用されるものもあります。
消費税の増税前後に購入するものを説明する前に、まずは経過措置について簡単に解説します。
経過措置の内容を知れば増税前に買うべきものがわかる
消費税は2019年10月1日から新税率になりますので、前日の9月30日までに購入したものは8%、10月1日以降に購入するものは10%の税率になります。
普通にものを買う場合は問題ないのですが、購入した日と、購入したものを利用する日が異なるものがあります。
例えば、映画の前売券や電車の定期券などがそれに該当します。
こういったものは他にもあり、消費税が10%になってから使うものでも、消費税8%のうちに購入できるものが決められています。
これを経過措置の対象といい。主に以下のものが該当します。
消費税の経過措置の対象となる主なもの
- 電車や航空機の運賃
- 映画、演劇、美術館、遊園地の入場料など
- 電気、ガス、水道、電話、通信の料金
- 請負工事契約(住宅・リフォームなど)
- 冠婚葬祭などの契約
- 本・雑誌の定期購読
- 通信販売
- 有料老人ホーム
一つずつ簡単に説明していきます。
1. 電車や航空機の運賃
電車、バス、航空機のチケットや切符は、消費税が8%のうちに購入したものを、消費税が10%になる2019年10月1日以降に使うことができます。
ただし、9月30日までに料金の支払いをすませておく必要があります。
2. 映画、演劇、美術館、遊園地の入場料など
電車の切符などと同様に、映画などの前売券も消費税8%のうちに購入しておき、2019年10月1日以降に使うことができます。
これに該当するものは、以下の定義に当てはまることが必要です。
映画、演劇、演芸、音楽、スポーツ又は見せ物を不特定かつ多数の者に見せ、又は聴かせる場所への入場料金(改正令附則第4条第1項)
料金は9月30日までに支払いをすませておく必要があります。
なお、ディナークルーズは食事に該当するということで、この適用はありません。
なお、ディナークルーズと称し、クルーザーで遊覧航行しながら飲食を提供する場合がありますが、当該サービスは飲食の提供を主目的とするものであり、遊覧航行は飲食を提供する場所に付加価値を与えるものですから、(途中省略) 当該サービスについては旅客運賃等の税率等に関する経過措置は適用されません。
出典:平成31年(2019年)10月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A【具体的事例編】(国税庁)
3. 電気、ガス、水道、電話、通信の料金
消費税が8%のうちから利用している電気やガス、水道、通信費などについては、2019年10月31日までに確定したものは消費税が8%になります。
例えば、2019年10月中に使った電気でも、10月31日までの検針で確定したものは全て消費税は8%になります。
また、スマホの利用料金も基本的に同様の扱いですが、すべて定額の場合は対象とはならないようです。通話量に応じて料金が確定する場合に対象となります。
ワイマックスなども定額だと対象になりませんが、通信量が一定量を超えると料金が変わるような多段階定額制については対象になります。
4. 請負工事契約(住宅・リフォームなど)
新築住宅やリフォームについては基本的に引渡日によって消費税の税率が決まります。
2019年9月30日までの引き渡しであれば消費税は8%となり、2019年10月1日以降であれば消費税は10%となります。
ただし、2019年3月31日までの契約であれば、10月1日以降の引き渡しでも消費税は8%になります。
注文住宅などの場合、引き渡しに半年以上かかることがありますので、この場合は10月1日を過ぎても消費税がは8%のままとされています。
リフォームも同様に3月31日までの契約なら10月1日以降の引き渡しでも消費税は8%になります
5. 冠婚葬祭などの契約
結婚式や披露宴など、2019年3月31日までに契約をしておけば、10月1日以降に実施される場合でも、消費税は8%が適用されます。
6. 本・雑誌の定期購読
こちらも契約に基づく、サービスや物品の提供になりますので、2019年10月1日以降に書籍や雑誌などを受け取る場合であっても、2019年3月31日までに契約し、9月30日までに支払いをすませておくことで、消費税率8%で購入することができます。
7. 通信販売
通信販売については、通信販売の業者などが2019年3月31日までに販売するものの内容を提示していて、その商品を購入する人が9月30日までに申し込みをした場合、10月1日以降に受け取っても消費税は8%です。
なお、対象となるのは、物に限らず、電子媒体のもの(電子書籍など)や通信教育なども含まれます。
通信販売等の税率等に関する経過措置の適用対象となる「商品の販売」は、物品の販売に限られませんので、通信教育や電子書籍の配信等の役務の提供も含まれます。
出典:平成31年(2019年)10月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A【具体的事例編】(国税庁)
8. 有料老人ホームの入居
一時金を支払うことで、生涯にわたって入居できる権利を得られる老人ホームにつき、2019年3月31日までに契約をして、9月30日以前から継続して介護サービスを受ける場合に消費税が8%となります。
キャッシュレス決済によるポイント還元
消費税の増税の対策として、もっとも注目されているのが、キャッシュレス決済によるポイント還元です。
キャッシュレス決済を行うことで、小売店なら5%、コンビニなどでは2%程度のポイントが還元されます。
期間は2019年10月から9ヶ月間です。
ポイント還元を受けられるお店は中小事業者で、大まかな還元率は以下の表にようになります。
還元率 | |
---|---|
中小・小規模の小売、飲食店など | 5%還元 |
コンビニ、外食、ガソリンスタンドなど大手系列のチェーン店 | 2%還元 |
百貨店など大企業や病院、住宅など一部の除外業種 | 還元なし |
経済産業省資料による
ポイント還元を受けられるお店には、以下のようなポスターなどが掲示されるので、わかると思います。
また、具体的にポイント還元を受けられるお店は、こちらで地図検索が可能です。
【参考】キャッシュレス・消費者還元事業の地図検索(キャッシュレス消費者還元事業)
大手のスーパーではポイント還元を受けられませんが、フランチャイズ加盟店は2%のポイント還元となりますので、一部のドラッグストアでも2%のポイント還元が受けられます。
コンビニもフランチャイズとして2%の還元対象になりますが、セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの3社では、あとでポイントをつける方式ではなく、購入時に即2%を差し引くということです。
ポイントは少なくとも2%の還元率になりますので、対象のお店で買い物をすれば消費税の増税分は気にする必要はないですし、5%還元なら増税後に買い物した方がお得ですね。
ポイント還元を受けられるキャッシュレスサービス
ポイント還元を受けられるキャッシュレスサービスは、クレジットカード、電子マネー、スマホ決済などです。
PayPayやLINEPayなど、広告で目にするスマホ決済だけでなく、とても多くのサービスが対象となっています。
ポイント還元を受けられるサービスは、キャッシュレス・消費者還元事業のホームページで検索できます。
【参考】ポイント還元対象のサービスの検索(キャッシュレス・消費者還元事業)
自分が持っているプリペイドカードなども検索してみてください。これもいいの?といったものがあるかもしれません。(逆にこれってダメなの?もあるかもです。)
消費税の増税前に買うべきもの
消費税の増税前に購入すべきものは、国が対策をしていないもので、消費税の増税分だけ確実に値上がりするものです。
上記の経過措置やキャッシュレス決済を踏まえつつ、増税前に購入すべきのものを解説します。
電車やバスの定期券、航空機のチケットなど
交通機関の料金には消費税が含まれていますので、消費税率が引き上げられれば、その分は確実に値上がりします。
運賃に関しては経過措置によって、事前に購入してもそのまま使うことができます。
電車の切符は指定券と一緒に購入するものであれば、1ヶ月前から購入できますので、使う時期を考慮して事前に買っておくといいでしょう。
定期券も消費税8%のうちに購入して、そのまま継続して使い続けることができます。できるだけ長い期間をギリギリの時期に購入するのがいいでしょう。
ただし、定期券の購入はかなりの混雑が予想されますので、注意しましょう。
映画、演劇、美術館、遊園地、プロ野球の年間指定席などのチケット
映画、演劇、美術館などの入場料にも消費税が含まれていますので、増税と同時に入場料金が値上げされることが考えられます。
予定が決まっているのであれば、前売券などを購入しておくといいでしょう。
プロ野球の年間指定席やディズニーの年間パスポートなども対象となりますので、事前の購入がおすすめです。
自動車(特に高級車)
自動車に関する税金は消費税の増税とともに大きく改正されますが、中でも大きい改正は自動車取得税の廃止、環境性能割の創設、自動車税の減税です。
基本的に自動車の場合は同じ車を購入する場合、消費税の増税前に購入する方が節約になるケースが多く、特に高級車の場合は減税される金額よりも、支払う消費税の方が大きくなる傾向があります。
50万円以下の中古車
自動車の中でも50万円以下の中古車であれば、もともと自動車取得税がかかりません。
消費税の増税後だと環境性能割という新しい税金がかかる可能性があるので、消費税が低いうちに購入した方がいいでしょう。
新築住宅・マイホーム
家の購入については、消費税の増税に合わせて、住宅ローン減税の拡充、住まい給付金の増額が実施されます。
さらには、次世代住宅ポイント制度が創設され、購入した住宅に応じてポイントをもらうことができ、様々な商品に引き換えることができます。
とはいえ、住宅にかかる消費税は負担は大きく、その上、減税や給付金は収入状況によって金額が異なります。
消費税増税の前後のどちらで購入するべきかは、こちらの記事でまとめていますので、参考にしてください。
リフォームについては増税前の方がいいと思います。
リフォームは経過措置の対象ですので、2019年3月31日までに契約をすることで10月1日以降に引き渡しとなっても、8%の税率が適用されます。
とはいえ、規模にもよりますが、リフォームの工事は長くても1ヶ月程度です。
例えば、8月から9月頃に工事を始めても引き渡しが10月以降にずれ込むことはないと思いますが、業者とスケジュールを確認しながら進める必要があります。
万一、10月1日以降の引き渡しになった場合に消費税を誰が負担するのかなど、事前に決めておくことが重要です。
白物家電
冷蔵庫、洗濯機、食器洗い機、炊飯器、電子レンジ、エアコン、暖房器具など、いわゆる白物家電は、最新機能にこだわらないのであれば増税前に購入してもいいでしょう。
家電量販店ではキャッシュレス決済によるポイント還元は受けられないと想定されますので、事前に買っておく方が良いと思います。
スマホ・パソコン
スマホ、パソコンやテレビは新しい製品が出てくるので、増税前だからといって購入するかは難しいところです。
新しいモデルの発売日を確認しつつ検討した方がいいでしょう。
2019年10月より前に自分の欲しいモデルが発売されるのなら、増税前に購入しましょう。
結婚式や披露パーティーなど
結婚式や披露パーティーなどは、消費税によって時期をずらすものではないと思いますが、9月〜10月あたりに行うのであれば、消費税8%のうちにやってしまうといいでしょう。
こちらについては経過措置が適用されます。2019年3月31日までに契約しておけば、10月1日以降に行うものでも消費税は8%になります。
予定のある人は、早いうちから計画を練っておくのもいいかもしれません。
本や雑誌の定期購読
本などは消費税の増税前に購入した方がいいでしょう。
雑誌などの定期購読の場合は、経過措置によって2019年10月1日以降に受けとる場合ものであっても、3月31日までに契約して、2019年9月30日までに支払いを済ませておくことで、消費税率は8%になります。年間購読であっても1年分全てが消費税8%で購読できます。
なお、新聞についてはもともと軽減税率が適用されますので、いつから購読を開始しても8%が適用されます。
歯の矯正やインプラントの治療、美容医療、脱毛など
歯の矯正やインプラントの治療は健康保険適用外の治療となり消費税がかかります。美容整形や医療脱毛も同様です。
これらは基本的に経過措置の適用がないので、消費税10%になってからの分は9月までに契約しても8%にはなりません。
したがって、高額な自由診療の治療を受ける予定のある人は早めに受けた方がいいでしょう。
旅行・ツアー
旅行については運賃などは経過措置で事前に支払いをすませておくことで、消費税8%で購入することができます。
とはいえ、旅行自体が消費税の増税後だと、パックツアーの料金などは消費税が8%にならないケースもありますし、旅行先での支払いは10%の税率になってしまいます。
なお、国際線の運賃や特別燃料付加運賃には、もともと消費税は課税されません。
ブランド品や化粧品
ブランド品やデパートで販売されている高級ラインの化粧品は、消費税が増税になってからも需要が減少することがないため、増税後にも値崩れしないと想定されます。
定期的に購入する化粧品などはある程度買いだめしてもいいと思います。
同様にブランド品も増税前に購入した方がいいと思われますが、増税前の需要を見込んで値段を高めに設定している販売店があるかもしれませんので注意しましょう。
ただし、ポイント還元を受けられる店舗で購入できるものであれば、増税後に購入しても問題ないでしょう。
また、小規模のお店でオリジナルブランドや、セレクトした高級なブランド品を扱っていたりする場合、5%のポイント還元を受けられる可能性もあります。
行きつけのお店がある場合は、そのお店が5%還元の対象になるのかを確認しておくといいでしょう。
市販の常備薬、コンタクトレンズなど
健康保険の効かないド市販の薬やコンタクトレンズなどは、消費税がかかりますので、使用期限などを考慮しつつ、ある程度の数を購入しておくといいでしょう。
ただし、ポイント還元されるお店で購入できる場合は事前に購入する必要はないでしょう。
カートリッジ、バッテリーなどの消耗品
プリンタのインクカートリッジや電池、電化製品のフィルターなどは、使用期限が長いので、事前に買っておくとよいでしょう。
ある程度の個数を購入する場合は、大手の量販店やアマゾンなどの通販を利用することになると思います。キャッシュレス決済の対象とならないお店で購入するものは、増税前に購入しておきましょう。
たばこ・お酒
たばこは値段のうち62.6%が税金で、7.4%が消費税です。
例えば、1箱480円のたばこの場合、値段のうちの消費税は35.55円です。
消費税が10%になると、消費税は44.45円になりますので、1箱あたり10円程度の値上がりが予想されます。
たばこは大手のスーパーで購入してもコンビニで購入しても値段はかわりませんので、増税後にコンビニで購入する場合は2%のポイント還元は受けられますので、事前に購入する必要はなさそうです。
5%還元を受けられるお店で購入すれば、さらにお得になりますので、そういったお店を事前に確認しておくといいでしょう。
お酒については、お店によって価格が異なりますので、安売りをしている大手のスーパーなどで増税前に購入した方が良い場合があると思います。
大手でもフランチャイズチェーンの場合は2%の還元を受けられますので、いつも購入しているお店があるのなら、ポイント還元が受けられるかを事前に確認しておくといいでしょう。
日常的に使用する衣類(下着、スーツ、ハンカチなど)
季節に関係なく使う衣類については、消費税の増税前に購入しておいてストックしておいてもいいでしょう。
値段が変動しにくく、長期に渡って使うもの
日常的に使うものではないけど、買い物の予定があるものなどは、消費税の増税前に購入するのがおすすめです。
例えば、以下のものになります。
- 呉服・振袖
- 墓石・仏壇・礼装(装飾品も含む)
- ランドセル・学習机
- ひな人形・五月人形
消費税の増税前に買う必要がないもの
一方で増税前に購入する必要がないのは、軽減税率の対象となる食料品や飲料品、新聞です。
これらは、消費税増税後も8%の税率となりますので、事前に購入する必要はありません。
軽減税率の対象で、キャッシュレス決済によるポイント還元を受けられるものは、消費税増税前より、増税後に購入した方がお得になりますので、ポイント還元を受けられるお店をチェックしておくといいでしょう。
特にドラッグストアの場合、フランチャイズを実施している企業とそうでない企業がありますので、注意したいところです。
また、以下のものはもともと消費税が課税されていません。
消費税が課税されないものの例
- 土地
- 株式・国債などの有価証券
- 商品券やプリペイドカード
- 個人が住む家の家賃
- 健康保険の対象となる医療費・薬代
- 国際線の航空機のチケット(運賃、燃油特別付加運賃)
- 個人間の売買取引(メルカリ、ヤフオク、中古住宅など)
日用品は影響が小さいので事前購入しなくてもよい
消費税の増税といっても今回は2%の引き上げです。
高額なものは事前に購入しておきたいところですが、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、洗剤、ゴミ袋などの日用品は、増税の影響額は少ないので、大量に買いだめして置き場所に困ったりするよりは、セール時に買った方がいいと思います。
キャッシュレス決済によるポイント還元を受けられるものもあるので、その辺も考慮して検討した方がいいでしょう。
まとめ
消費税の増税前に購入した方がいいものについて、制度の内容とともに解説してきました。
今回は消費税率は2%の引き上げになりますので、前回の増税と比較すると金額の影響が少ないと思います。
その上、かなり多くの消費対策が実施されますので、増税前に購入すべきものは限られてきます。
必要なものを書き出して、買い物リストなどを作っておくといいかもしれません。