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個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)はとても優遇された制度で、老後資産の形成にはもはや欠かせないツールと言えます。
ただし、受取方法によって税金がかなり異なります。今回は受取方法と税金について説明します。

受取方法によって税金が変わる

イデコは税制優遇された制度で、拠出時には全額所得控除にできる上に、資産の運用益は非課税となります。

ただし、受取時には課税対象として扱われます。

課税されるといっても、優遇税制の対象となるので、大きな税金がかかる可能性は少ないのですが、受取方法によって税額が変わってきますので、注意しなければいけません。

受け取る年齢は決められる

税金の説明の前に受け取ることができる年齢ですが、60歳から70歳までの間で決めることができます。

60歳で受け取らない場合は、その後は新たな拠出はできませんが、70歳までは運用をすることができます。

また、イデコに加入している期間が短いと60歳から受け取ることができません。受取開始が可能となる年齢は以下の表のとおりです。

加入期間 受取可能年齢
10年以上 60歳
8年〜10年 61歳
6年〜7年 62歳
4年〜6年 63歳
2年〜4年 64歳
2年未満 65歳

10年以上加入している人は、60歳以降(70歳まで)の好きな時から受取を開始することができます。

3種類の受取方法

イデコの受取方法は3種類あります。

3つの受取方法

  1. 全額一括(一時金)で受け取る
  2. 年金として受け取る
  3. 一部を一時金、一部を年金として受け取る

受取方法は自由に選択することができます。

それぞれの税金について、以下で説明していきます。

全額を一括で一時金として受け取る場合

一括で受け取る場合は税務上「退職所得」として扱われることになります。

退職所得は通常の課税所得とは別に計算することになっていて、他の所得と比較して控除額が大きくなり、税金が少なくなります。

退職所得の計算は以下のようになります。

退職所得 = (退職金 – 退職所得控除)× 1/2

退職所得控除は以下のように計算します。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数(80万円に満たない場合には、80万円)
20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

国税庁より

この計算式によると、20年の勤務で800万円の控除があります。

また、それ以上の勤務だと勤務年数に70万円を乗じた金額が控除されることになります。

イデコを一時金で受け取る場合は、勤続年数をイデコの掛金払込年数に置き換えて計算します。

例えば、イデコに20年間加入していて820万円の資産を一時金でもらう場合、以下のようになります。

退職所得 = 820万円 – 800万円(退職所得控除) = 20万円

  • 所得税:20万円 × 5% = 1万円
  • 住民税:20万円 × 10% = 2万円
  • 合計 :3万円

820万円に対して、3万円の税金を支払うことになります。

会社から退職金を受け取る人は要注意!

退職所得控除はとても金額が大きいのですが、会社からも多くの退職金をもらう人は注意してください。

イデコにかかる税金は会社からの退職金と合わせて考える必要があります。

例えば、勤続年数が30年で、その間に20年間イデコに加入していたとします。

  • 会社からの退職金1700万円(勤続年数30年)
  • イデコの一時金820万円(加入期間20年)

会社で働いている期間にイデコにも加入していたとします。

この場合の退職所得控除の計算で使用する勤続年数は、会社とイデコを合わせて30年になります。(ダブっている期間がある場合、その分は加算できず長い方に合わせて計算します。)

したがって、退職所得控除は以下のようになります。

800万円 + (70万円 × 10年)= 1500万円

そして、退職所得は・・

((退職金1700万円 + イデコ820万円)− 控除1500万円) × 1/2 = 510万円

  • 所得税:510万円 × 20% − 427,500円 = 592,500円
  • 住民税:510万円 × 10% = 51万円
  • 合計 :1,102,500円

この場合、イデコの給付額には退職所得控除がいかされないので、納付税額が多くなってしまいます。 

イデコの受取時期とずらしたらどうなるか?

イデコを受け取る時期をずらして、退職金と別の計算をすることはできるのでしょうか。

残念ですが、そのような計算は認められていません。

イデコを受け取る前年以前14年間に退職所得控除を受けた場合は、前に退職金を受けた年分との重複期間は控除して計算しなければなりません。

つまり、会社に勤めている期間にイデコに加入していた人は、退職金をもらってから14年間はイデコを別にして計算することはできないんです。

仮に、イデコの820万円を一括で退職金の翌年に受け取る場合には、退職所得控除は最低限の80万円を控除できます。税金は以下のようになります。

  • 退職所得 = (820万円 − 80万円) × 1/2 = 370万円
  • 所得税:370万円 × 20% – 427,500円 = 312,500円
  • 住民税:370万円 × 10% = 37万円
  • 合計 :682,500円

退職金と一緒にもらうよりは、税金が少なくなりますが、イデコのみの場合と比較するとかなり大きな金額になります。

イデコを一時金で貰う際に気をつけることは?

上記のとおり、会社からもらう退職金などによって、イデコにかかる税金がかなり違ってきます。

一時金でもらうかどうか、その時期をどうするか、そういったことは年金でもらう場合も考慮して判断しなければいけません。

次に、年金で貰うことについて、説明します。

年金として受け取る場合

年金として受け取る場合は、受取年数と回数を選べます。

受取の年数は、5年から20年の間で決めることができます。

受取回数は以下のとおりです。

受取回数 受取月
年1回 12月
年2回 6・12月
年4回 3・6・9・12月
年6回 偶数月

公的年金と同様に雑所得として課税される

イデコを年金として受け取る場合は、公的年金と同様に雑所得として課税されます。

公的年金とイデコの給付額を合計して、そこから公的年金等控除を差し引いて雑所得を求めます。

公的年金等控除は、65歳未満の人は年間70万円まで、65歳以上の人は年間120万円までが非課税です。

それ以上になると少しずつ課税される所得が増えていきます。

厚生年金を多く受給する人は、その分イデコの給付にかかる税金が多くなります。

例えば、65歳以上で以下の人の場合を考えてみましょう。

  • 老齢基礎年金 78万円
  • 老齢厚生年金 200万円
  • 合計 278万円

公的年金を278万円もらっている場合の税金は、概ね以下のとおりです。(社会保険30万円、基礎控除、配偶者控除を考慮)

  • 所得税:26,000円
  • 住民税:56,000円
  • 合計 :82,000円

ここにイデコの820万円が入ったとしましょう。

820万円は20年間で受け取ることにして、年間41万円を取得すると所得税と住民税は以下のとおりになります。

  • 所得税:46,500円
  • 住民税:97,000円
  • 合計 :143,500円

イデコを受け取らない場合と比較して、61,500円増えることになります。

これが20年間ですので、

61,500円 × 20年 = 123万円

となります。

つまり、この場合はイデコの受け取りに123万円の税金がかかることになります。

年金形式で受け取るには手数料も必要

年金形式で受け取る場合には、受け取りが終了するまで一定の手数料がかかることに注意してください。

手数料は以下のとおりです。

  • 口座管理手数料・・年間2,000円から3,000円程度
  • 1回の受取手数料・・432円

口座管理手数料は金融機関によって異なりますが、受取時の手数料は受け取るごとにかかります。(年に4回受け取る場合は432円×4=1,728円)

仮に口座管理手数料が年間2,000円として、受取を年に2回とすると、20年で以下の手数料がかかります。

(2000円+432円×2) × 20年 = 57,280円

20年分で換算すると、それなりの金額になることがわかります。

年金形式で受け取るかどうかは公的年金しだい

このように、年金形式で受け取るかどうかについては、国民年金や厚生年金がいくらになるかということが重要です。

一時金として受け取っても、年金として受け取っても、税金がかかりそうだという人には、併用がおすすめです。

次に併用で受け取ることについて、説明していきます。

一部を一時金、一部を年金として受け取る場合

一時金と年金での受け取りについて説明してきましたが、併用での受け取りは税金が少なくなる場合が多いです。

国民年金や厚生年金は原則として65歳からの支給(年齢によっては65歳より前から支給される分があります。)になりますので、それより前の5年間はイデコを年金として受け取り、それ以降については一時金として受け取るという手法があります。

65歳未満は70万円までは非課税

65歳未満の人は、公的年金等控除は70万円となりますので、イデコの受け取りが70万円以下であれば課税されません。

また、他の所得がない場合は、105万円を受け取っても所得が35万円になりますので、この場合は所得税も住民税も非課税になります。

仮に70万円ずつ5年間受け取った場合、

70万円 × 5年 = 350万円(非課税)

となります。

上記の例と同様に、イデコが全額で820万円の場合、350万円分は非課税になり、残りの470万円が残りになります。

この470万円を一時金で受け取る場合の税金は以下のようになります

(470万円 − 80万円)× 1/2 = 195万円(退職所得)

  • 所得税:97,500円
  • 住民税:195,000円
  • 合計 :292,500円

併用で受け取る場合の税金は292,500円となります。

一番税金が少ない受取方法は?

ここまで受取方法による税金の違いを見てきましたが、結局のところ、その人の退職金や公的年金の状況で税金は大きく変わってしまいます。

退職金が少ない人は一時金がいい

会社からの退職金が少なく、イデコを一時金で受け取るとにき、非課税になる場合はその後の手数料もかからないので、一時金で受け取る方がいいでしょう。

退職金を多く貰う人は併用がおすすめ

退職金を貰う人で、退職金に税金がかかる人は、そこにイデコの分をプラスすると、イデコ分には税金がかかってしまいます。

ですので、年金を受け取るまでの60歳から64歳は70万円ずつ、受け取ることをお勧めします。

その上で、残りを一時金とすることがいいでしょう。

退職金と別に受け取れば、退職所得控除を80万円は使えますので、一緒に受け取る場合よりも有利です。

65歳までは年金で受け取るのがいい

公的年金を受け取る65歳までは、年金方式で受け取れば年間70万円までは非課税となります。(5年間で350万円分が非課税

このことだけでも、把握しておくといいでしょう。

まとめ

イデコはとても優遇された制度ですが、受取時には少し考慮が必要です。

ご自身でよくわからなければ、専門家に相談するのもいいと思います。